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“家電メーカー”三洋が本腰を入れる「リアプロTV戦略」インタビュー(2/3 ページ)

» 2004年12月14日 00時16分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 マイクロデバイス方式のメリットを生かせるのは50インチ以上ということだが、中国で発売されたリアプロTVには45インチもラインアップされている。

 「我々としては画面サイズを大きくできるメリットを活かしたいのだが、中国市場では45インチ前後が売れ筋でラインアップからは外せないということで、45インチを作った。中国での実際の販売でも、2対1の割合で45インチの方が多い」(杉邨氏)

 中国での販売は低価格なCRT方式が人気なこともあって当初の予測よりやや少なめに推移しているというが、今後はマイクロデバイス方式が中心になっていくと杉邨氏は語る。

 「CRT方式は重い/大きい/ボケ感があるといった欠点のほかに、スクリーンサイズを大きくできないという問題がある。画質的には40インチ台が限界。より大画面へというニーズや、北京オリンピックに向けたハイビジョン化の流れから、今後はマイクロデバイス方式が主流になってくるだろうと見ている」(杉邨氏)

国内の積極展開は“鶴の一声”から

 同社は中国展開のスタート時から、国内での展開も視野に入れていることを明言していた。

 杉邨氏は「当社はリアプロTVを事業の柱の1つにしたいという思いがある。中国市場での展開を足がかりに、北米/欧州/中国以外のアジアでもやりたいとは思っており、その中には当然日本も含まれていた。ただし当初は(リアプロTVの国内展開を)あまり大々的にやろうとは思っていなかった」と開発当初のエピソードを打ち明ける。

 「国内は地道に展開」の方針から一転し、CEATEC前の9月に国内展開が突然発表されたのは、同社取締役コンシューマグループCOOの壽英司氏の“鶴の一声”からだった。

 「壽氏はリアプロTVへの思い入れが強く、以前から“リアプロTV事業をやらなければいけない”といろんな場所で話していた。その壽氏が、中国向けに出来上がったリアプロTVの製品を見て“これなら国内でも勝負できる”と確信。今年のCEATECも当初は出展する予定はなかったのだが、壽氏が“堂々とやれ”ということで、CEATEC前の発表に至った」(杉邨氏)

 壽氏だけでなく、同社会長の井植敏氏もリアプロTVの推進者。同社にとってリアプロTVへの取り組みは必然だったともいえる。

 「フロントプロジェクターをやり始めて10年が経ち、家庭向けのZシリーズではトップシェアとなるまでになった。だが、やはりフロントだけでは大きな市場にならない。フロントの技術を活かしつつ、次に踏み出せる製品としてリアプロTVが一番適していたということ。現在の事業部の前身である映像メディア事業部では、プロジェクターの部隊とともにTVの部隊も一緒に存在し、両部隊のメリットを生かせるリアプロTVへの取り組みは、かなり以前から進んでいた」(杉邨氏)

家電メーカーとしてのこだわり

 プロジェクター及びテレビに関する豊富なノウハウを有する“家電メーカー”の同社が作るリアプロTVには、市場での期待も大きい。

 LP-55WR1は、L型レンズを使った独自開発の短焦点光学エンジンによって、55インチという大画面ながら奥行き40センチ弱という薄型ボディを確保している。

photo 従来のCRT方式に比べて奥行きを薄くできるのもマイクロデバイス方式の魅力。LP-55WR1は55インチながら奥行きは40センチ弱しかない

 「現在使用している25〜29インチクラスのブラウン管テレビよりも奥行きが少なく、リビングにも十分置けるサイズ。薄型をアピールするプラズマテレビでも55インチクラスではしっかりしたTVスタンドが必要となり、スタンド込みになると奥行きはほぼ同じになる。一方で重さ(LP-55WR1:40キロ、プラズマ:80キロ前後)や消費電力(同:278ワット、同:500ワット前後)はプラズマの半分。55インチクラスではプラズマと十分に対抗できる商品に仕上がっている」(杉邨氏)

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