新日本石油は12月20日、LPガス仕様の家庭用の燃料電池システム「ENEOS ECO LP-1」を発表した。ENEOS ECO LP-1は、LPガスから取り出した水素と空気中の酸素で発電し、廃熱を利用して給湯も行う“コージェネレーション(熱電併給)システム”だ。
二酸化炭素などの排出量を減らし、また伝送時のエネルギーロスも少ない高効率の発電システムとして期待されている燃料電池。18年間に渡って開発を進めてきたという新日本石油の渡文明社長は、「燃料電池は、従来に比べて、二酸化炭素排出量を3割から4割も削減できる“環境対応型エネルギーシステム”だ。家庭用燃料電池としては、12月6日に東京ガスが都市ガスを使うシステムを発表したばかりだが、LPガス仕様の商用化は世界初」と胸を張った。
燃料電池は、いわゆる“水の電気分解”と逆の理論で発電する。セルの内側では、電解質を挟んで片方の電極(燃料極)に水素、もう一方の電極(空気極)に酸素を送り込み、化学反応を起こして電気を起こす仕組みだ。ENEOS ECO LP-1では、このセル技術を三洋電気が提供しており、製造も担当するという。
発電効率は34%で、定格発電容量は750ワット。消費電力が750ワットを超える時間帯や、電気料金の安い深夜には系統電力(電力会社からの電気)を使用することになるが、標準的な4人家族の場合なら、一日の6割を燃料電池による発電だけでまかなえるという。また、発電時に生じる廃熱の42%を回収して給湯に利用できるため、「風呂や床暖房などに利用すると、トータルのエネルギー効率は76%に上る」。これにより、200リットルの貯湯槽を65度の温水で満たすことが可能になる。
「一般的な4人家族の場合、1日に使うお湯はおよそ400リットル。65度のお湯に水をくわえて40度前後に下げることを考慮すれば、十分な量だと考えている」(同社常務取締役研究開発本部長の松村幾敏氏)。もちろん、貯湯槽にはバックアップ用の給湯器を備えて“お湯切れ”を防いでいる。
「LPガスの使用量は7割ほど増えるが、電気料金を大幅に削減できる。エコロジーで経済的なエネルギーだ」(渡社長)。
新日本石油では、2005年度に関東圏の1都10県を対象に限定150台を設置する計画だ。当初は採算を度外視した“実証実験”の色合いが濃く、保証付きレンタルの年間契約料を6万円に抑える代わりに、システム利用に関する運転データの提供とアンケート調査への協力を求める。また、導入第1号として、プロスキーヤーの三浦雄一郎氏など、環境問題に関心の高い著名人5人の名前が挙げられた。
2006年以降は全国展開を図り、一年間で500台を目標にするという同社。渡社長は、「2010年には120万台の家庭用燃料電池が普及すると予測されているが、このうち10万台を占めることが目標」と話している。なお、東京ガスが発表した都市ガス仕様の燃料電池については、「都市ガスは鋼管が整備されている場所が前提のため、世帯数でいうと約5割。残りの約半分がLPガスの対象世帯だ。形としては、“すみ分け”になるだろう」とした。
新日本石油 | 東京ガス | |
---|---|---|
燃料 | LPガス | 都市ガス13A |
定格発電容量 | 750ワット | 1キロワット |
発電効率 | 34% | 31%以上 |
熱回収効率 | 42% | 41%以上 |
貯湯槽容量 | 200リットル☆2☆ | |
販売方法 | レンタル☆2☆ | |
年間コスト | 6万円 | 10万円 |
市場投入時期 | 2005年3月より限定150台 | 2005年度末までに限定200台 |
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