阪神大震災を被災したエンジニアが、地震被害を最小限にとどめるためのシステムを作った。
開発したのは、ホームネットワークシステムなどを手がけるアペクセラ。家庭内に設置した「緊急地震速報通報装置」で、地震発生までの秒数や震度を通知。ホームコントローラーがガスの元栓を閉めたり、玄関ドアを開けて避難経路を確保する。電子情報技術産業協会(JEITA)が4月1日からスタートする「IT自動防災システム」の実証実験で機能などを検討し、商品化を進める計画だ(関連記事参照)。
気象庁が昨年2月に始めた「緊急地震情報」を活用する。気象庁の地震計が感知した初期微動(P波)データを、JEITAのサーバ経由でアペクセラのサーバに配信。アペクセラのサーバは、契約家庭の位置情報や地盤情報をもとに大きな揺れ(S波)の到達時間や予想震度を計算し、各家庭に設置した通報装置に配信する。
通報装置は、予想震度や到達時間を液晶表示すると同時に「震度6、15秒後」などと音声で読み上げ、あらかじめ設定したメールアドレスにも情報配信。設定震度以上なら、ホームコントローラ「i-SIRIC」が作動し、ガスの元栓を自動で閉めたり、ドアロックを解除してドアを開け、避難経路を確保する。緊急地震情報配信からiSIRIC作動までは3秒程度だという。
iSIRICのOSはTRONで、ツイストペアケーブルで接続した機器を10台まで制御可能。電池駆動に対応し、停電時にも作動する。ドア開閉機能は在宅時のみ作動するようにした。システムの導入価格は10万円前後になるという。
システムの開発陣は全員、阪神大震災の被災者だという。「祖父母や兄弟を一瞬で失った社員もいる。ITを生かした地震情報システムが当時あれば、身近な人を失わずにすんだかもしれないと、痛恨の思いで開発した」と、同社の長谷川勇社長は話す。
ただ、震源が近い直下型地震では、P波とS波がほぼ同時に到達してしまう。「1秒後に地震が来ます、といわれても対策の取りようがない」(同社企画室の清水陽リーダー)。阪神大震災のような直下型地震への対応は、解決すべき課題だとした。
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