わが国のテレビ保有台数は1億2千万台近くと言われている。世帯数は4700万程度だから、1世帯で2台目、3台目のテレビを保有しているケースがかなり多いということが、この数字からも分かる。ただ、大多数の世帯では、仮に3台のテレビを持っているとしても、一番高機能で立派なテレビがリビングに置かれており、2台目、3台目のテレビは比較的廉価な製品であるというケースが多いのではないだろうか。
現時点では、プラズマや液晶といった薄型の三波共用デジタルテレビが順調に売れている。大画面でも場所を取らないメリットがあるからだが、価格的にみればまだまだ高額商品だ。数多くの世帯がこうした高額商品を2台も3台も購入するとはちょと考えにくい。
そうした問題については、地デジ推進協議会でも大きなテーマとして採り上げられているようだが、2台目以降のテレビの買い替え需要をどう見るかということは、現実論ベースで検討されざるを得なくなっている。
仮に、1億台のテレビが買い替えられるとして計算してみよう。そのすべてが三波共用機に買い替わることなどあり得ない。三波共用機の場合には、B-CASが標準装備されている。1台目だけは三波共用機に買い替わると考えても、マックスで4700万台である。
ここで忘れてならないのが、わが国の5割前後の世帯がケーブルテレビ経由でテレビ放送を見ているという事実である。
ケーブルテレビ経由で視聴する世帯の場合、三波共用機であっても単なるディスプレイでしかなくなる。そもそも三波も何も関係ないのである。また、ケーブルテレビ経由の場合には、原則としてセットトップボックス(STB)が必要だが、STBを2台も3台も置くと、ケーブルテレビに支払うコストが高くなってしまうので、やはり三波共用機に買い替わるのはマックスで4700万台にしかならない計算になる。
そこにケーブルテレビ経由の視聴世帯が5割であるという掛け算をすると、地上デジタル放送に対応するためにテレビを買い替える人のうち、三波共用機の価値を生かそうとして買い替わるのは精々、3000万台くらいに落ち着いてしまうことになりかねない。
そうなると、残りの7000万台がどうなるのかという話になってくるわけだ。筆者はこれは新しいRMP(コンテンツ権利保護システム)を利用した地デジ専用機になる可能性が多分にあると見ている。なぜ新RMPなどと言うのかといえば、既存のB-CAS方式によるRMPには限界が見え始めてきたからだ。実際、地上デジタル推進協会ではすでに新RMPの早急な規格化・普及に向けて動き出している。
RMPによる地デジ専用機の価格は、精々、5万円か6万円になるだろう。三波共用機の方は、ようやく1インチ=1万円の水準に価格が下がってきたが、プラズマや液晶などを利用した薄型デジタルテレビの場合、部材の製造コストなどを考えると、将来的にも32インチで20万円くらいで下げ止まる可能性が高い。
一方、5万円、6万円の地デジ専用機の方は、2万円、3万円になっていくだろう。そうなると、非常に多くのテレビが、この“地デジ専用機”に買い替えられるていくことになるはずだ。
これは、BSデジタル民放や、110度CS放送陣営にとって、予想外に厳しい状況になりかねないことを意味する。
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