2月28日から2日間、「アジア オンラインゲーム カンファレンス2005」(主催:ブロードバンド推進協議会)が開かれる。オンラインゲームの海外展開を積極的に行うコーエーの松原健二執行役員は「Japan発Onlineゲームを成功させる戦略」と題して講演する。講演に先立ち、松原執行役員に同社の中国戦略を聞いた。
「中国は、何もかもが日本とひとケタ違う」――松原執行役員は、中国の巨大市場に期待を寄せる。コーエーは「信長の野望 Online」(信On)と「大航海時代Online」を年内に中国でサービスイン。ユーザー規模を拡大して売り上げとブランド認知を高め、パッケージゲームの売り上げ増にもつなげる。
オンラインゲームは、当たれば見返りが大きいビジネスだ。「信Onの国内課金ユーザーは6万人。月額料金は1200円なので、1年で8億円の売り上げだ。8億円は、PS2用ソフトに換算すると20万本分で、年間売り上げランキング50位以内のヒット作並み」。ユーザーは一度定着すればなかなか離れないため、継続的な収益を得られる。
しかし、国内展開だけでは維持が難しいという。3D画像を駆使したオンラインゲームは億単位の開発費が必要な上、サービスイン後もサーバやメンテナンスにコストがかかる。「サービスを維持するには、海外進出して売り上げを伸ばし、運営管理のコスト効率を高める必要がある」。
中国は最も有望な海外市場だ。松原執行役員によると、中国のオンラインゲームユーザーは1200万人で、さらに成長を続けている。「1200万人といっても13億の人口からすると1%以下。ほんの数%伸びるだけでもユーザー数は大きく拡大する」。
ただ、課金額は日本より安く、金額ベースの市場規模はそれほど大きくない。「日本の信Onは30日間で1200円だが、中国は30日で500円程度のゲームが多い。実入りからすると、日本と中国ではまだ3〜4倍の開きがある」。単価の低さはユーザー数でカバーする必要がありそうだ。
国内ゲームメーカーが中国進出する場合、オンラインゲームに頼らざるを得ないのが現状だ。パッケージゲームは海賊版に市場を荒らされ、正規版はほとんど流通していないためだ。
国際知的財産権アライアンス(IIPA)の2004年のレポートによると、中国で流通しているパッケージゲームの96%が海賊版。コーエーも海賊版に悩まされてきており、中国でのパッケージゲーム販売は慎重に行ってきた。
ただ、コーエー製品の海賊版が広く流通しているため、コーエーブランドは中国に定着しているという。信長の野望や三國志シリーズの海賊版は人気商品。信Onも、中国進出を決める前から期待のゲームとしてメディアに大きく取り上げられた。
「信長シリーズは日本の歴史物。中国では受けないと考えていた」――信Onで中国進出するつもりは当初なかったというが、パッケージゲーム海賊版が人気と知り、オンライン版も多くのユーザーを集められると判断。中国進出を決めた。
信Onに続き「大航海時代 Online」「三國志 Online」(仮称)もリリース予定。中国で“正規”のコーエーブランドの定着をはかる。
「日本はパッケージゲーム→オンラインゲームの順で普及してきたが、中国は逆」。オンラインゲームでブランド価値を高め、正規版パッケージ市場の拡大を狙う。「昨年、『三國志X』の違法コピーを販売する会社や工場を取り締まることができた」。著作権意識の高まりを背景に、本格展開の時期をうかがう。
中国でネットゲームを配信するのは簡単ではない。何重も張り巡らされた“規制の壁”を破らねばならないためだ。「Webサイトを作って公開するだけでも許可が必要。免許もなかなかとれない」。加えて、ネットの急速な発達に伴って制度も刻々と変わっており、新参者の外国人には対応が難しい。これを乗り越えるため、同社は運営ノウハウに詳しい現地企業とパートナー契約を締結。共同でサービス展開する。
信Onは中国に加え、台湾でも展開。大航海時代 Onlineは中国、台湾、韓国でリリースする。三國志 Onlineは中・台・韓のほかアジア各国で2007年にサービスインする計画だ。
他社に先駆けて海外にユーザー基盤を広げ、先行者利益を享受する。「他社が今からオンラインゲームを開発しても2〜3年はかかる。そのころコーエーはすでに3〜4タイトルを市場に投入済み」。
三國志 Onlineは、シンガポールに設立した新拠点で開発する(関連記事参照)。「例えば、アジアでは歴史物が、日本ではRPGが、アメリカではスポーツゲームが人気など、ゲームは地域性が高いため海外の開発拠点は重要」。シンガポールならITレベルも高く、英語、中国語など多言語国家。周辺のアジア諸国や中国、オーストラリア進出への拠点としても便利な位置にある。ゲーム開発を支援している政府の強力も得て人材育成を急ぐ。
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