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「QRIO」、“勉強”に目覚める?(1/3 ページ)

» 2005年04月10日 06時21分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 ロボットは意識を持つことができるか?――「鉄腕アトム」の登場以来、日本人が常に抱えてきた疑問を、ロボット工学と認知科学の両面から検討する研究が進んでいる。この“インテリジェンス・ダイナミクス”(知能の動力学)を提唱しているのはソニー。同社が主催するシンポジウムが昨年に続いて開催され、多くのロボット研究者が集まった。

photo シンポジウムでは、QRIOのデモンストレーションも実施されたが、普段と少し様子が違う。プログラムされたシナリオに沿って動く優等生ではなく、何かをしようとして失敗したり、迷ったり……まるで幼児のようなQRIOを見ることができた。とりあえず、カワイイから良しとする

 インテリジェンス・ダイナミクスは、“実世界との関わりを通じて進歩する人工知能”を作ろうというアプローチだ。自律動作が可能になったとはいえ、現在のロボットは事前に決められたプログラムに沿って動いているに過ぎない。複雑なプログラムを大量に書けば生きているように見えるかもしれないが、それにも限度がある。たとえばエンターテインメントロボットなら、“飽きる”という形で限界が訪れる。 

 「AIBO」や「QRIO」の開発にも携わったソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所のシニアリサーチャー、下村秀樹氏はある疑問を感じたという。「AIBOもQRIOも、最先端の技術を惜しげもなく投入したロボットだ。しかし、プログラミングの作業を終えたとき、このロボットは、これ以上発達しないんだと気が付いた」。

 ――ならば、人間や周囲の環境から新しいことを学び、自律的に機能を追加できるような能力を持たせられないだろうか?

 「ロボットやエージェントは、自律的な行動を通して、自分が持つセンサーやモーターに根ざした機能を発達させる能力をまず身につけるべきだ。(そうすれば)人を飽きさせず、長期間のインタラクションが可能になる。それには、単なる要素技術の開発に止まらない、“インテリジェンス・モデル”全体を作る必要がある」。

 インテリジェンス・モデルは、ロボットがセンサー入力やモーター出力から得た情報をフィードバックし、必要な機能を学習するための“計算モデル”。同社は現在、インテリジェンス・モデルを構成する基本的な機能を検討し、部分的に開発している段階だ。

 開発のアプローチは3つ。「反射行動」(体の各部を動かすための基本機能)、教えられたことを憶えていくための「教示の受け入れ」、そして自律的な学習を可能にする「モノマネ」だ。「エージェントに求められるのは、発達し続けること、人間の働きかけを受け入れること。さらに、(発現した行動は)人間からみて合理的に説明できる行動でなければならない」(同氏)。

 シンポジウムの会場では、QRIOを使って研究の最新成果がデモンストレーションされた。今回は踊ったり、走ったりといった派手なパフォーマンスはない。プログラムされたシナリオに沿って動く優等生ではなく、何かをしようとして失敗したり、迷ったり……まるで幼児のようなQRIOを見ることができる。普段とは全く違う印象だ。

 「通常、デモを行う際には、事前に動きをプログラミングしていくものだ。しかし、今回のQRIOは、教示や環境とのインタラクションで行動を“獲得”していく。そして適切な条件でその行動が発現する」。

QRIO、予測する

 たとえば、ボールと積み木を使用したデモンストレーションは、「インタラクティブ・インテリジェンス」(環境やユーザーと動的に作用するメカニズム)を検証するものだ。専門用語ばかりではよく分からないので、デモの流れに沿って見ていこう。

 用意したものは、QRIO、机、赤いボール、赤いベル。まず、研究者がQRIOの手を握ってベルの上に振り下ろし、ベルが鳴ることを教える(=教示)。QRIOは、モノが大きく動いたり、大きな音がすると“面白い”と判断するように定義されており、ベルを見ると叩こうとするようになる。ユーザーの教示から「ベルの鳴らし方」という“行動”を獲得し、スキルアップしたわけだ。

photo ベルを鳴らすQRIO

 しかし、ベルが移動していたりすると、QRIOは手を振り下ろす場所の座標を修正できず、叩きそこねてしまう。そこでベルの位置を変えながら複数のパターンを教えてあげると、今度は教えられた範囲なら、どこにベルがあってもしっかり叩けるようになった。「ベルを叩く」という目標を達成するため、自分の行動(ベルの座標に対して手を振り下ろすときの結果)を“予測”して動作するようになったのだという。

photo 場所を動かしても「チーン」
photo ちょっとイジワルされてしまったQRIO。QRIOは赤い色でベルを判別しているため、白いカップを被せるとわからなくなってしまう

 次に、赤いボールをQRIOの前に置く。QRIOは、ベルのときと同じように叩いてみるのだが、もちろん音は出ない。首を傾げるQRIO(カワイイ)に、研究者は“横から押すと転がって面白い”ということを教えてあげる。位置を変えながら何回か教示すると、今度はベルやボールがどこに置かれていても、叩いたり、転がしたりできるようになった。「今、QRIOは目の前にあるものを見て、“できそうなこと”を選択した。できそうなことを実行したときの結果を予測し、行動を決めている」。

photo

QRIO、ストレスを溜める

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