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東芝・藤井氏に聞く――次世代DVD統一交渉“決裂”の理由(後編)インタビュー(1/3 ページ)

» 2005年06月08日 00時07分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 今回の次世代DVD統一交渉では、東芝はかなり積極的にアプローチしていたようだ。しかし、4月下旬の新聞報道でやや態度が変化し、大詰めとなる交渉最終週を迎えた5月10日には、まるで180度方向を変えたがごとく、0.1ミリ統一から離れていったように見える。その背景にあったのは何か? 前回に引き続き、東芝上席常務の藤井美英氏に話を伺った。

――前回のお話にあったように、統一交渉のポイントが“技術論”でなく“経営判断”だったなら、消費者優先の観点からも、統一合意へと向かうのが自然だったのではありませんか?

 「それはそうでしょう。私は真剣に統一について考えていました。東芝グループトップの全権委任を受け、微妙に利権の絡む交渉をまとめようとしていたのです」

 「しかし、あのようなリーク記事が生まれた。しかも内容は東芝にとって不利な曲解も含まれていましたが、ほぼ正しい情報に近いものです。どこかから情報が漏れない限り、ああいった記事が掲載されることはありえません。それが2回も続けば、疑心暗鬼にもなります」

 「さらに大々的に“0.1ミリで合意”と書かれたことで、HD DVDを共に推進している企業から、東芝の0.6ミリ構造に対する自信が揺らいでいると思われてしまった。われわれは、この点において揺らいだことは一度もありません。BD側にも共に規格を推進する仲間がいるように、われわれにだって仲間がいる。そうした中で、あのような情報が漏れたことは残念です。結局、あの情報で得したところは一つもありませんよ」

 「しかし、交渉決裂に至る細かな決断の経緯については、今は言いたくありません。言い合いになって、(感情的に)グチャグチャするだけでしょう。今回、私が一番懸念したのは、とにかく独禁法の懸念です。まずは0.1ミリを前提とした統合の話し合いを行っていた。これは事実ですが、“0.1ミリで合意してスグに統一規格ができあがる”ように(記事に)書かれると、では0.1ミリでなぜ合意したのか。それは消費者利益にどのように関係があるのか? 十分に議論されずに“0.1ミリ統合ありき”で話が進んだことになってしまう」

 「無条件に妥協して、“談合”により(統一後の)利益供与を約束されたのではないかと余計な腹を探られます。これはきちんと否定しなければなりません。だから、われわれは一貫して“0.1ミリで合意したつもりはありません”と言い続けていますし、0.1ミリに変更するだけの合理的な情報があるならば、提示してほしいと言い続けています」

――15日の最終交渉はお一人でしたが、ほかの交渉の場には技術部門代表として、東芝HD DVD事業推進室長の佐藤裕治氏も同席したと聞いています。交渉の現場では、かなり意見の食い違いがあったようですが、東芝全体として統一に望む意思統一は行われていたのでしょうか?

 「前述したように、私は東芝本社社長の岡村(岡村正氏)から、光ディスク統一の全権委任を受けていました。対して佐藤室長は、文字通りHD DVDを推進するのが仕事です。彼はHD DVDを推進する立場からBDに対して否定的な意見も述べていましたが、交渉の窓口は私であって、佐藤室長は技術を評価するブレーンです」

 「交渉途中に45Gバイトディスクの発表もありましたが、東芝の光ディスク事業を行っている現場はHD DVDを全力で推進しています。それとは全く分離されたところで、私が全権を持った上で統一交渉も進めていたということです。東芝の判断は何かと言えば、私自身の判断ですから、東芝の意見が割れていたということではありません」

 「また、巷で言われているトップ会談ですが、私は全権委任されて交渉していたのですから、さらに上のレベルでの経営判断ということもあり得ません。きわめて高度な政治的な判断も必要とされ、その交渉の現場にいなければ正しい判断は下せません。私が納得すれば統一は可能でしたし、今でもそれは変わりません」

――交渉の中ではマイクロソフトとの提携関係についても話されたようですね。マイクロソフトはこれから、ゲーム機でソニーと正面から勝負をする。マイクロソフトと東芝の包括提携やクロスライセンスが、今回の統一交渉に及ぼした影響はありますか? レドモンドには、Windows MediaとHD DVDを推進する担当エグゼクティブがいるようですが。

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