音質重視のHDDプレーヤー「HD20GA7」を発売したケンウッド。新製品はデジタルアンプを搭載するほか、シャーシも非磁性ステンレス合金製で「圧縮オーディオのプレーヤーではなく、“ケンウッドのオーディオプレーヤー”として開発した。命をかけたというと言い過ぎかもしれないが、そのくらいの気持ち」とコメントされるほどに力の入った製品だ。
開発については、同社オーディオ製品について音質面での責任を負う「音質マイスター」が全面協力していることも大きな特徴だ。デジタルオーディオプレーヤーという比較的新しい製品ジャンルにおいて、ここまで音質に対する追求を前面に押し出した製品は類を見ない。
音質マイスターの荻原光男氏(ホームエレクトロニクス事業部 音質研究室 主幹)から、本製品に見られる“音質へのこだわり”について話を聞いた。
――音質マイスターとは具体的にどのような事をしているのでしょうか?
「音決め、音作りですね。音質マイスターという制度は3年ほど前から始まったものですが、それ以降は、発売されるすべてのオーディオ製品について音質マイスターが携わっています。製品化に際しては企画部署が主導する場合もありますが、そうした場合でも、“ケンウッドらしいの音”がするよう、私たちが調整するのです」
――目指すターゲットによって求められる音質は異なってくると思いますが、普遍的に目指す“ケンウッドらしい音”とはどういった音なのでしょう。
「クラシックの中高域から得られる“品位”や、“つながり”が感じられる音とでも言うべきでしょうか。また、音の骨格が“ピシッ”と表現されている、そうした音でもあります。この“骨格”は今回の製品(HD20GA7)でもかなり実現できました」
――デジタルオーディオプレーヤーは音源に圧縮音源を使用します。音源がCDやDVD-Audioではなく、圧縮音源であることでの難しさというものはあったのでしょうか。
「音作りという面ではそう勝手が違うということはなかったのですが、セット(本体)が小さくて、扱いが難しかったですね。具体的に言えば、部品も1ミリ以下のものが多く、トライ&エラーを繰り返すこと自体が困難でした。世の中の見方というものもありますが、部品が小さいことによる音質対策の難しさ、これもデジタルオーディオプレーヤーの音質について評価を下げている側面もあると思いますね」
――2月には初めての圧縮オーディオ製品「M512A3」を発売しています
「あれはうまく製品化できたと思っていまして、新製品を開発する前には“あれよりいい音の製品を作るのは難しいのでは”と思うほどでした。ですが、開発を進めるうちに、ある時期から“超えてるんじゃないか?”と感じ始めたのです。そう感じさせた理由は2つあって、ひとつは大容量の電源を搭載したこと、もうひとつはデジタルアンプの搭載です」
「デジタルアンプは、アナログアンプに比べると安価でもクオリティが一定しています。アナログアンプの場合、安価なパワーICは値段なりの音しかしなくて、高価なものを使えば加速度的に音は良くなります。デジタルアンプは価格が安くてもそこそこの音がするので、これ(HD20GA7)のような価格帯の製品に使う場合、圧倒的にデジタルアンプの方がレベルが高いですね」
「ただ、今回搭載されているデジタルアンプに対して言えば、実は不満を感じることもあります。デジタルアンプという部品は日進月歩で良くなっているので、もう2世代、3世代後のデジタルアンプを使えば、もっといい製品を作れるのではないかと期待しています」
――デジタルアンプがポータブル製品に向くならば、なぜこれまでのHDDオーディオに採用されてこなかったのでしょう
「理由は単純で、扱いが難しいからです。設計上の難しさもありますし、ラジエーションも含めたトータルとしての扱いにも難しさがあります。ケンウッドはポータブルMDで既にデジタルアンプを搭載していますので、そのあたりのノウハウは蓄積されていたのです」
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