文化庁著作権委員会著作権分科会 法制問題小委員会が6月30日に行われ、私的録音録画補償金制度の見直しについて集中的な議論が行われた。
このテーマは4月28日に行われた同委員会でも審議されており、制度の実効性や対象とされていないiPodなどHDD搭載機器について、どうとらえるかについて審議がなされている。今回は私的録音補償金管理協会(sarah)と私的録画補償金管理協会(SARVH)から、集められた補償金の分配フローについての説明が行われた後、私的録音録画補償金について、参加各委員が再度意見を述べた。
両協会の報告によると、平成16年度の受領金額(対象となるメディアや機器などから徴収された金額)はsarahが23億3936万9144円、SARVHが14億8328万1339円。そのうち管理手数料(sarahが4.9%、SARVHが6.1%)と著作権制度についての教育や助成事業などに使われる共通目的基金(両団体ともに20%)、クレーム基金(SARVHが加盟団体以外の権利者へ用意している補償金 5%)を除いた、17億9824万7683円/11億7万2375円が権利者団体へ分配されている。
sarahから分配を受けているのは日本音楽著作権協会、日本芸能実演家団体協議会、日本レコード協会。SARVHから分配を受けているのは私的録画著作権者協議会、日本芸能実演家団体協議会(音楽事業者協会を含む)、日本レコード協会(音楽出版社協会を含む)の各団体。団体から各著作権者への支払いも「1円単位で」(sarah)行われているという。
先日、私的録画補償金については運用開始以来初めてとなる消費者への返還が行われたが、8円の返還を請求するために80円切手が使われたということもあり、委員からは「制度は実効性を欠いているのではないか」との指摘もなされた。SARVHは「返還金額が低いことと返還制度の実効性は無関係であり、(今回のケースは)たまたま金額が小さかっただけだと考えている。制度はデジタル技術の進化によって生み出されたもので、現在の技術に則した手直しが行われるべきだ」と述べ、制度そのものの必要性を強調した。
HDD搭載製品を同制度の対象とする(法令によって対象に含める)かどうかについては慎重な意見を述べる委員が多く、「まずはより綿密に調査を行うべき」「制度自体の周知を進めるべき」という意見も目立った。著作権法30条の2では、制度の対象となる品物を製品名などではなく利用されている技術で定めているため、専用機/汎用機の区別を法的に確保することが難しいことも、慎重論が多い理由のひとつといえる。
「法律で指定するにしても、具体的な定め方は難しい。仮にiPodのようなものを指定しても、音楽用として販売すれば対象になり、ポータブルHDDとして販売すれば対象にならないという、CD-Rなどと同じ不合理性を引き起こしかねない」「“電話も音楽も”という複合機が増えことも予想されており、“主たる”や”専用”といった言葉で機器を区別することは難しくなるのではないか」
ただ、慎重論が目立つものの制度そのものが現状のままでよいという意見は少なく、「現行制度を前提とした議論ではなく、見直すことを考えた方がいいのでは」「DRMで処理された音源のみを扱う品物ついては、補償金の対象にするべきでは」「完全に汎用/専用を切り分けることは難しいので、指数を導入するという考えはどうだろうか」など、何らかの改善策が必要だという意見が多く見られた。
「制度そのものを含めた慎重な議論が必要だろう」と4月に行われた委員会で中山主査が述べたように、今回の審議ではほかにも「現在の一律徴収/事後返還に構造的な問題があるならば、代替案がないか検討する必要がある」「合理的なのは、用途別に販売してお金を取り返すという手間をかけさせないこと」「(消費者に)分かりやすい形、誤解のない形で表示し、運用することが大切だ」などの発言がなされ、“私的録音録画補償金制度”という権利者保護と、消費者利益とのバランスをどのように保つかについて、多くの意見が交わされた。
ただ、権利者保護と消費者利益という非常に繊細な問題が主題となったため、明確な意見統一には至らず、委員会は3時間以上に渡った審議を終了した。次回からは中間まとめの検討に入り、9月には中間まとめに関する意見募集と、著作権分科会が開催される予定となっている。
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