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コラム
» 2005年07月14日 19時15分 公開

西正:ケーブルテレビ事業、強みの生かし方 (1/2)

米国で大手通信事業者とケーブルテレビ事業者の競合が激しくなっている。この流れはいずれ日本にも波及してくるだろう。だが、わが国のケーブルテレビ事業の場合、地域独占ビジネスを展開してきた。その“強み”を真に生かせれば、競合を生き抜くことができるだろう。

[西正,ITmedia]

本当の意味の地域密着とは

 ケーブルテレビの強みも課題も“地域密着”という一語に尽きるのだが、事業者によって地域密着にかなり濃淡があることを感じる。筆者が地元の人に話を聞いていても、そこをエリアとするケーブルテレビ局名を知らないとか、会ったこともなければ話したこともないということさえ耳にすることがある。これでは地域密着と言われても、うなづきかねるところだ。

 あるCATV局の話だが、お年寄りが解約手続きを取りたいと電話をかけてきたので、理由を聞くと、1年間もリモコン操作にチャレンジしたのだが、とうとう使うことができなかったという。確かに、最近のリモコンは複雑で、50個以上のボタンが付いている。それにしても、全く使えないことはないだろうと出向いていったところ、リモコンに電池が入っていなかったそうである。

 これを笑い話と考えているようでは、とても地域密着などと言う資格はない。普段からエリア内を営業して歩いて、何か困ったことがあったら気軽に相談にのれる体制ができていたら、こんなことは決して起こらなかっただろうからだ。

 日本でもケーブルテレビ業者がいずれ大手通信事業者と競合するようになる可能性は否定できないが、大手事業者にはできなくて、ケーブルテレビ事業者ならできることが、そうした真の意味の地域密着サービスである。

 携帯電話会社のようなショップを作って、そこで色々と会って話せる場を設けることも大事だろう。いずれにせよ、迷惑がられない範囲内で、一軒一軒訪問して歩くことが重要だ。それも加入営業のためだけと考えているようでは、契約を取ってSTBを設置した途端に行かなくなってしまう。既に加入している世帯に対するフォローを忘れないようにすることが大切だ。

 元々大手通信事業者の場合は、ビジネスモデルからして大きく異なっている。エリアは全国展開だし、通信のサービスというのは商品説明の必要性が低いこともあって、チラシを入れるとか、メールを送るだけでサービス内容を理解してもらうことができる。

 一方、ケーブルテレビ営業の場合は、難視聴世帯は別とすれば、ベーシックチャンネルの中身を説明することが不可欠になる。

 特にケーブルテレビの顧客というのはファミリー層であることが多いため、趣味も嗜好も多様だ。20チャンネルのベーシックパッケージのチャンネル名だけを並べてチラシなどを配ったところで、真剣に見てもらえることは少ないだろう。女性を中心に人気のある「LaLaTV」も、知らない人がチャンネル名だけ見せられても、どのようなチャンネルなのか分かるはずはない。それを説明して歩くことが重要だ。

 ゴルフの好きな家族がいれば、「ゴルフは好きですか? 一日中ゴルフ番組が見られるのですよ。地上波で見られないツアーの前半もすべて放送しています。レッスン番組まであります」と説明すれば、耳を傾けてくれるかもしれない。ゴルフに興味がなくても、囲碁・将棋があるとか、年配の人には懐かしの日本映画や時代劇が見られるチャンネルがあることもアピールできる。もはや韓国ドラマはあふれ返っているが、それでもアピール材料になるかもしれない。

 放送サービスの売り方と通信サービスの売り方の最大の違いはそこにある。放送サービスを売る以上、チャンネル名と料金表だけを配っているようなやり方では、加入者が増えることは期待しにくい。

 筆者が述べたような試みを以前から行っているという事業者もある。しかし、中には地域独占であることから、このエリアに住んでいる以上、そういうチャンネルまで見たかったらウチと契約するしかないと、まともに勧誘にすら行っていない事業者もあるようだ。それでは地域密着が全く強みになっていないことになる。こういった事業者は、大手通信事業者がエリア的に競合することになった際、単純な価格競争になって負けてしまうことになるだろう。

放送と通信の違い

 放送と通信の連携が進む中で、新たな形のサービスも続々と投入されている。だが、どれほど便利なサービスであっても、ユーザーがそれに慣れ親しんで普及していくまでに一、二年はかかるものである。

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