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デジタル音楽プレーヤーはライトスポーツに注目すべきだ小寺信良(2/3 ページ)

» 2005年07月19日 11時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 スポーツモデルが米国で浸透し、日本で流行らなかった理由を考えてみると、それはやはり「スポーツ」や「レジャー」に対するアプローチ、さらに言えば就業時間の違いではないかと思われる。どうも日本人の傾向として、普段は仕事オンリーでみっちり生活し、スポーツはたまの休みに集中するというスタイルが一般的なのではないか。つまりレジャーとスポーツと旅行を、一点にまとめてやってしまうようなところがある。

 ヘビーデューティーなスポーツモデルは、たまのレジャーの時には確かに良いだろう。しかし音楽プレーヤーとしての使用頻度を考えると、どうしても日常を視野に入れざるを得ない。しかしスポーツモデルは、日常的に使用するにはいささか大げさすぎるのである。

 一方米国では、車社会で肥満大国という問題を抱えながらも、その側面ではジョギングなどの運動を日常的に続けている人々も多数存在する。コンベンションなどが行なわれる観光地ラスベガスでさえも、早朝からホテル街をジョギングする人の姿を多く見かける。彼らとて旅行者には違いないわけだが(地元の人ならわざわざホテル街に来て走らないだろう)、旅先でも習慣化したジョギングをやめられない、というか、知らない土地を走ることを楽しんでいる風情だ。

 スポーツすることが毎日の生活サイクルの中に定着しているか否かという差が、スポーツモデル定着の差として現われても不思議ではない。このようなことからオーディオ機器メーカー各社は、日本国内向けにはスポーツモデルの販売を敬遠してきたわけだが、そういうかつての常識を見直すことが新しいビジネスチャンスに繋がるのではないか、というのが今回の趣旨である。

中年以降に芽生える健康意識

 読者諸氏の中でも、「あー、最近運動らしい運動してないなー」と思っている方もいることだろう。そういう人は筆者に言わせれば、まだ若いのである。これは何かのデータに基づいたものではなく、まったく筆者の身の回りの話で恐縮なのだが、どうも20代30代を仕事に追われながら不健康に過ごした人ほど、40代になって急に体のことを気遣うようになり、運動を始めるケースが案外多いのではないかと思う。

 おそらく30代半ばぐらいまでは、体力というか自分の健康に対して過信しているのだが、40歳に近づくにつれて、健康診断などで肝臓とかコレステロール値とかが引っかかるようになる。またそのころから社会的な責任が大きくなり、自分が倒れたら部下が路頭に迷ったり家族が路頭に迷ったりという姿を、リアルに思い描けるようになる世代へ突入していくわけである。

 有り体に言えば思いっきり筆者にそれが当てはまるわけだが、実は筆者も最近になって、健康のために毎日5キロメートルほどのジョギングを行なうようになった。いつものコースで会う人は、だいたい30代後半以上だ。このような健康のための日々の運動という視点で行くと、従来の意味でのスポーツというのはあまりにもイメージがヘビー過ぎる。

 つまりスポーツとして思い浮かべてしまうのが、どうしても「ストイックな精神」であったり「常に全力」であったり「ナントカ大会出場」であったりと、ものすごく気合いの入ったレベルなのだ。しかしオーディオ機器の場合は、スポーツモデルにおける「スポーツ」という言葉の意味するところを、もう少しライトなものへシフトする必要があるのではないかと思う。

 例えば(これは筆者も最近知ったのだが)、韓国は数年前から健康ブームなのだそうである。韓国と言えば言わずと知れたMP3プレーヤー大国であるわけだが、サムソンのMP3ブランド「yepp」のスポーツモデル「YP-60シリーズ」のコンセプトも1つの考え方だろう。

 このモデルは本体上部のセンサーに触れることで、心拍数やカロリー消費量を測定してグラフ表示する機能を備えている。スポーツモデル特有のアームバンドはあるものの、特に頑丈とか防水といった特徴ではなく、ちょっとした機能部分で差別化を図っている。筆者は新宿の某量販店の店頭で実物を見たことがあるが、残念ながら日本向けのサイトには製品情報がなく、もしかしたら日本向けの製品ではないのかもしれない。

 まあカロリー計はちょっと大げさだとしても、ジョガー用としては万歩計や距離計算といった機能はあってもいいかもしれない。日常の運動というレベルのスポーツモデルでは、水没してもOKとか象が踏んでも壊れないとかいった方向の頑丈さは、必ずしも必要ではないのである。

 さらにスポーティというだけで黄色や蛍光オレンジのような、遭難したときに一発でわかりますぐらいのイキオイで派手な色遣いというステレオタイプな発想も、再考する余地があるだろう。

ライトなスポーツモデル

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