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デジタル音楽プレーヤーはライトスポーツに注目すべきだ小寺信良(3/3 ページ)

» 2005年07月19日 11時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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ライトなスポーツモデル

 デジタルプレーヤーの中でも、メモリータイプは比較的スポーツ用として転用しやすいと思う。現状のiPod Shuffleやウォークマンスティックでも十分に小型軽量で、走るときに邪魔にならない。運動中はさほど曲検索といった操作は必要ないが、ボリューム操作ぐらいは本体を見ずに手探りだけで操作できる点は便利だ。

 筆者も数年前までスポーツジムに通っていたことがあるが、その当時は今のようにメモリープレーヤーがさほど認知されているわけではなく、運動中に音楽を聴く人はそれほど多くなかった。だが今ではずいぶん事情も変わってきているようだ。

 筆者の周りでは、運動時の音楽プレーヤーとしてiPod Shuffle派とウォークマンスティック派に二分されるのだが、両派共に共通しているニーズは「そのままサウナにも入りたい」というところである。両製品とも動作温度の上限は35度となっており、サウナはあきらかに動作保証外だが、逆にサウナに入ってもOKという製品が開発可能なのであれば、そこにニーズはあるだろう。

 筆者のジョギングには、ウォークマンスティックを愛用している。本体はまあいいとして、ジョギングするにあたって難題だったのが、ヘッドホンである。最初にインナーイヤータイプを試してみたが、走っている途中で抜け落ちてしまって、全然ダメだった。もっと耳奥まで入れるカナルタイプも試してみたが、このタイプは歩いただけで体中の音がガサゴソと伝わってきてしまう。走るとさらにうるさくて、音楽どころではない。また一般道のジョギングでは、あまり遮音しすぎるのも安全性の面で問題がある。

 次にイヤークリップ式のものをしばらく使ってみた。これはインナーイヤー型、カナル型の問題点をクリアしたが、このタイプは構造的に耳たぶに噛みついているようなものである。つまり耳への密着度が耳たぶの強度次第なところがあって、一歩走るたびに耳たぶがぷるんぷるんして気持ちが悪かった。またイヤーパッドの面積が広いため汗を沢山吸収してしまって、構造的にも衛生的にも問題がありそうだ。

 結局のところ一番無難だったのが、米国で買ったソニーのスポーツモデル「MDR-W20G」というヤツだった。一般的なヘアバンドスタイルだが、このバンド部分の素材が柔らかいので、そのままだと耳から抜けやすいため、全然使っていなかったものだ。だがこの上から帽子をかぶると、ピッタリ耳に固定される事がわかった。もともとバンド部分も薄く作られており、もしかしたら最初からこういう用途を想定しているのかもしれないが、このTIPSを発見したときはちょっとうれしかった。

photo 一昨年米国で購入したスポーツモデルのヘッドホン「MDR-W20G」

 今となっては説明書も捨ててしまったので詳細がわからないが、おそらく防水仕様ではないと思われる。これから夏場を迎えると汗もすごいことになっていくので、軽く水洗いできたり除菌効果があったりするヘッドホンも、スポーツ用途に限らず需要があるのではないかと思う。

 「優秀なセールスマンはエスキモーに氷を売る」という例え話がある。これは必要のないものを無理矢理売りつけるという意味ではなく、ニーズの掘り起こしということだろう。ポータブルオーディオプレーヤーのスポーツモデルをヘビーデューティと捉えず、もっとライトに受け止めることで、潜在的な需要を掘り起こすことができるのではないか。オーディオ機器メーカーは、この日本市場で鬼門と言われたスポーツモデルに、もう一度ライトな感覚でトライしてみる価値はあるのではないかと思う。


小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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