ビデオカメラの出荷台数が頭打ちとなって久しい。
エレクトロニクス製品としては熟成の域に達しているDVカメラは、サイズダウンにしても画質にしても大幅な向上は難しく、新市場創出を狙ったDVDビデオカメラやHDDビデオカメラも、ビデオカメラ市場を大きく底上げするまでには至っていない。
そんなビデオカメラ市場で、今月7月7日の発売と同時にいきなり販売ランキング1位を奪い去り、いまなお他を圧倒する勢いで販売を伸ばしている1台がある。ソニーが満を持して市場に投入した普及型ハイビジョンビデオカメラ「HDR-HC1」だ。
SD映像までしか撮影できない従来型ビデオカメラのハイエンドモデルの価格に、プラス5万円程度で1080iの高画質なハイビジョン映像を撮影できるこの製品は、LifeStyleの辛口レビューアーをして「今、ビデオカメラを買うならこれしかない」と言わしめたほどの実力を秘めている。
当然、ビデオカメラウォッチャーの麻倉怜士氏が、この注目製品をほっとくはずがない。
毎回、AV業界の最新情報や、独自の分析、インプレッションなどを聞き出す月イチ連載「麻倉怜士の『デジタル閻魔帳』」。今回は麻倉氏に、ビデオカメラの歴史を振り返ってもらいながら、HDR-HC1の魅力とハイビジョンビデオカメラが切り拓く新市場の可能性について語ってもらった。
――まずは家庭用ビデオカメラの歴史を教えてください。
麻倉氏: 家庭用ビデオカメラの歴史は2つの時期に分けられます。、最初は1970年代後半のセパレート型で、これはカメラ部とレコーダ部が別筐体のものです。VHS/ベータのビデオデッキをポータブル化して外に持ち出し、撮像管カメラをケーブルで接続して撮影するというスタイルが主流でした。それから、カメラ部とレコーダ部が一体型となったいわゆるカムコーダー(Camcorder)となったのが1980年代前半で、1983年に登場したソニーの「ベータムービー」とビクターの「VHS-Cビデオムービー」から、本格的な家庭用ビデオカメラの時代が始まったのです。
1980年代はたくさんのメーカーがビデオカメラ市場に参入していました。家電メーカーは当然のこと、銀塩カメラメーカーも多く取り扱っていたのですが、やがて1990年代になると淘汰が始まりました。そして今現在でも頑張っているのはソニー・松下・キヤノン・ビクター・日立ぐらいで、シャープはそろそろ撤退かなという感じ。1980年代の賑わいから考えると、現在は相当寂しいな、という印象ですね。
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