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ロボットの“グッドデザイン”とは?(1/2 ページ)

» 2005年08月30日 04時19分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 先週末に東京ビッグサイトで開催された「Good Design Presentation 2005」(GDP 2005)では、例年になくロボットの出展が目立った。これらは「グッドデザイン賞」にノミネートした商品ではなく、大学や研究機関が企画展示の「グッドデザインイニシアティブ」に出品したもの。それぞれの展示内容から、ロボットデザインに対する複数のアプローチが見えてくる。

活動場所を選ばないデザイン

 たとえば日本大学芸術学部デザイン学科のブースでは、地震などの自然災害や原子炉事故といった“人が近づけない場所”で救助活動を行うレスキューロボットが展示されていた。近畿大学大学院総合理工学研究科河島研究室とロボメカニクス研究所がメカニズムを開発。日本大学がデザインを担当した“産学学協同プロジェクト”だ。

photo 救助ロボット。全高は1.5メートルほど。脚部のシリンダーが特徴的だ

 救助ロボットの特徴は、遠隔地から自動追尾式のレーザーでエネルギーを供給し、長時間の運用が可能になること。さらに、腕と脚の両方に“パラレルメカニズム”を採用したことで、柔軟な動きを実現したという。

 パラレルメカニズムとは、1本の脚に対して複数のシリンダーを並列(パラレル)にリンクした機構のこと。たとえば一般的な2足歩行ロボットのような間接の構造をしていると横方向に動くのは難しいが、このロボットは脚の左右にあるシリンダーを伸縮させることで、真横にも移動できる。また複数のシリンダーが体を支えるパラレルメカニズムは、2足歩行ロボットより重量を抑えられる点もメリットだ。

photo こちらは「TREK-LEGS」。4本足になると階段の昇降も容易になる

 このほか、同ブースでは人が搭乗して山道を歩く4足歩行ロボット「TREK-LEGS」の模型も展示していた。こちらは、救助ロボットの研究中に学生が発案したというもので、やはりパラレルリンク機構による4本の脚を持つ。

 「脚が4本あれば、山道や悪路でも動物のように歩くことができる。展示したのはコンセプチュアルな模型だが、理論的には完成している」(日本大学芸術学部デザイン学科の肥田不二夫教授)。

舞踊の型(かた)を実現するデザイン

 「Kazuo Kawasaki Advanced Design Laboratory」のブースでは、「MAI」(舞)と「ODORI」(踊り)という2つのロボットを出品していた。川崎和男氏は、グッドデザインプレゼンテーションの選考委員を長年に渡って務めたプロダクトデザイナー/ディレクターだ。今回は、同氏が教鞭をとる名古屋市立大学大学院芸術工学研究科と大阪大学大学院工学研究科フロンティア研究機構が共同でブースを構えていた。

photo 「MAI」。動作時以外は足を収納して円筒形になる
photo 4本の脚を持つ「ODORI」は、MAIよりもアクティブな印象を受ける

 川崎氏が提案するロボットデザインは、形態論と身体論からのアプローチ。表情豊かに喜怒哀楽を表現し、その動きは「日本舞踊の型(かた)を形態論的に具現化するもの」という。

 動きを想像するのは難しいが、CGによる動作イメージの映像が流れていた。それを見ると、MAIは目を寄せたり、首を傾げたりといった“ちょっとした仕草”の組み合わせで表情を作り出す。顔は非常にシンプルなのに、漫画のキャラクターのように表情が変わるのが面白い。

photo
photo かなりシンプルな顔をしているが、簡単な動きで“表情”を作り出す「MAI」。「ホームネットワークとの仲介を行うエージェントなどの用途が考えられる」というが、やはり家庭用ロボットにとって表情は重要なヒューマンインタフェースだろう

 一方「ODORI」のCG映像は、4本の脚を使って段差を上るというもの。段差の前に来ると、1本の脚を縮めて階段の高さまで持ち上げ、その脚が上の段に乗ると、今度は逆側の脚を持ち上げるといった具合で器用に段差をクリアする。

photo 「ODORI」
photo 4つの足を伸縮させて段差を超える

 ロボットの内部機構は大阪大学工学研究科が開発を進めており、「MAI」のほうは既に動作できるという。残念ながら今回は動作デモンストレーションを見ることはできなかったが、その名の通り、優雅に舞い踊るロボットを早く見てみたいものだ。

ロボットも喜ぶユニバーサルデザイン

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