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放送・通信連携時代にはベンチャー企業が興隆する西正(2/2 ページ)

» 2005年09月22日 18時48分 公開
[西正,ITmedia]
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 貸し出し商品は全部が掲載(あるいは着用、放映)されるとは限らない。だからこそ掲載や放映が決まったものの情報をプレスや営業が一元管理できるメリットは大きい。企画・生産チームに追加生産を指示したり、店頭の目立つ場所で陳列するよう指示したりすることにより売上げの極大化に寄与する。

 イー・ステージのMRMシステムを使うと、掲載(着用による露出)は電子クリッピングというデータの形で情報管理が行える。これは貸し出し・掲載データとリンクしているため見落としを防ぐことができる。保存性や分析性にも富んでいるため、反応の良かった媒体や着用モデル・タレントなどが数値データとして明確に示されるため、次の媒体戦略を立案するための有用な情報となる。

 こうした情報を的確に把握できることから、ブランドの価値を維持・向上するための「ブランド・エクイティ・マネジメント」にも資することになる。ブランドを資産として考える経営はアパレル業界においては必要不可欠のものである。

 大手アパレルメーカーやスーパーブランドの多くが次々とイー・ステージのMRMシステムを採り入れるようになったのも当然と言えるだろう。

 ファッション雑誌はもちろんのこと、視聴者がテレビ放送を見ながら、タレントの着ている服がどこのメーカーのもので、素材、色の種類、価格、在庫の有無までもが瞬時に把握できるような情報を、イー・ステージならば容易に提供できる。まさに、放送と通信が連携することによって、視聴者が待ち望んでいた高度化したサービスを提供できるベンチャー企業であり、ファッション情報については他の追随を許さないまでのポジションを得ている。実際、テレビや雑誌の中でタレントやモデルが着用している服についての情報の大半をイー・ステージが一社で独占的に把握していると言っても過言ではないのだ。

 それだけの情報を一手に持っているのなら、イー・ステージと組みさえすれば、テレビや雑誌に登場してきたファッション情報を提供できる上に販売することもできるというサービスは、誰もが行えるのではないかと考えられがちである。

 しかし、大手アパレルメーカーやスーパーブランドは、自らの大切な商品がどこで売られるのかということを強く意識する。売れれば良いというものではない。ブランド・エクイティ・マネジメントとはそういうものだ。

 放送と通信の連携時代が到来しつつあるなかで、やはり放送事業者、通信事業者を中心として、強力なブランド力を有する事業者こそが、実現できる新サービスにならざるを得ない。もちろん、イー・ステージのシステムを使えば、ファッションに限らず、時計でも靴でも、さらには食材であっても、メディアと連動した情報提供ならびに販売が行えることは言うまでもない。

 放送と通信の連携を成功させるためには、視聴者にとって分かりやすく、なおかつ利便性の高いサービスが提供されるようにすることが一番である。そうしたサービスのすべてを放送事業者や通信事業者だけで考案することは難しい。

 しかし、メディアの大きな変革期には、必ず秀逸なベンチャー企業が登場してくる。イー・ステージはその典型である。こうしたベンチャー企業を見逃すことなく、確実にアライアンスを組んでいくことが、勝利の方程式となるのではないだろうか。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「視聴スタイルとビジネスモデル」(日刊工業新聞社)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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