放送と通信が連携することで生み出されるサービスには数々の事例が挙げられているが、典型的なものはテレビ番組に連動した情報や商材のやり取りが可能になることである。例えば、テレビドラマを見ていて、主役の人が着ている服が素敵だなと思った時に、それがどこの製品で、どこに行けば買えて、価格はいくらなのかということを知ることができれば、明らかにテレビドラマを見る楽しさが向上するだろう。
ところが実際には、ドラマの最初や最後に「衣装協力」という形でクレジットされるアパレルメーカーのブランドロゴなどが画面上を流れていくだけで、視聴者としては個別の服についての情報を得ることは不可能に近い。相当な動体視力の持ち主であっても、表示されたブランドロゴをすべて把握することは難しいだろう。仮にビデオに録っておいて、スロー再生してみたところで、ブランド名までは分かっても、個別の衣装がどのブランドのものかを知ることはできない。
出演者の着ているある服がどのメーカーの製品かといった情報は、実際の撮影現場などに立ち会うスタッフなら知りようもあるが、それはあくまでも現場レベルの話。視聴者がテレビ局に問い合わせても、それを教えてもらうことは不可能に近い。
だからもし、今まで分からなくても仕方がないと思っていたことが、新たに情報として提供され、なおかつ購入できるチャンスが出てくれば、視聴者にとっては非常に貴重な新サービスとなることは間違いない。
放送と通信が連携して新たなサービスが提供されるようになるというのであれば、そのくらいの情報が得られるようになることを期待したいところだが、技術的に連携がなされても実際の情報を持っていなければ、そうしたサービスが提供されるようにはならない。
そうした情報をシステム管理する事業者がいれば、新たなサービスも可能になるわけだが、これまでの経緯からすると、衣装ひとつを取っても、情報管理が行き届いていたとは言えない状況にあったのが現実なのである。
売れっ子のタレントになるほど、テレビへの出演回数は増えることになるが、売れっ子になればなるほど、いつも同じ服を着ているわけにはいかなくなる。そこでタレントのスタイリストがアパレルメーカー、スーパーブランドから衣装を調達してくることになるのだが、提供する側としては宣伝にもなるということから無料で貸与しているケースがほとんどだという。
とは言え、テレビを見ている視聴者には、それぞれのタレントが着ている服がどこのメーカー、ブランドのものかは分かりようがない。よほど目立つロゴが刺繍されている服でない限り、実際には大した宣伝効果は発揮できずにいるわけである。
まして、既製服のように同じものがいくらでも有るという世界ではないので、メーカーやブランド側としても、多品種少量の服について、どのタレントのスタイリストに、いつ、どの服を貸し出したのかといった管理は煩雑なものでしかなく、宣伝効果どころか、肝心の自らが情報を把握できていない状況にあった。書店の店頭に並ぶ数多くのファッション情報誌の場合も、テレビほどではないにせよ、必要十分な管理がなされてはいない。アパレルメーカーの貸し出し業務は華やかに見えて、非常に非効率に行われているケースが多かったのである。
現場がこうした状況のままでは、いくら放送業界と通信業界が連携プレーを試みたところで、ユーザーフレンドリーな新サービスは生まれてこない。
こうした環境を打開して成功するのがベンチャー企業の役割であるとすれば、このアパレルの分野で注目されるのが、イー・ステージ(東京都港区、野崎勝弘社長)の取組みだ。同社が開発したMRM(メディア・リレーションシップ・マネージメント)システムを活用すれば、アパレルメーカーやスーパーブランドは、メディアでの露出を自らの効率的な営業に結びつけることができるようになるのである。
もちろんそれだけではなく、このシステムは実は放送と通信の連携によって視聴者が欲するサービスを提供するためのシステムとしても活用できるのだ。そうした形で宣伝効果が高まるということになれば、貸し出し業務と営業との相乗効果も発揮し得ることになるため、同社のシステムを取り入れるメーカーが続出している事情もよく分かる。
MRMシステムを使うことによる効果は、商品貸し出しの効率化から始まる。
従来は手書きで処理していた業務を、貸し出し時、返却時、掲載媒体、掲載日をシステム入力管理に変えることにより、メディアへの露出情報がすべてデータベース化される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR