欧州委員会は今週、欧州におけるライセンスシステムの構築を早める計画を発表する予定だが、主要デジタルオンラインメディア企業各社がこの計画を強く批判している。欧州委員会は、著作権所有者とコンテンツプロバイダーが25の法管轄区に個別に申請する手間なしに欧州連合(EU)域内で通用するライセンスを取得するための構想を披露する計画だ。
デジタルメディア業界団体European Digital Media Association(EDIMA)のディレクター、ウェス・ハイムズ氏は、欧州委員会の動きは、集団的権利管理に関する競合力を持つシステム構築を導くものではないと指摘している。「集団的権利管理に関する包括的な改革が不足している。それが問題だ」と同氏は語っている。EDIMAの会員には、Amazon.com、Apple Computer、MovieSystem、RealNetworks、そしてインターネットサービスプロバイダーのWanadoo、Yahoo、Tiscaliなどが名を連ねる。
ハイムズ氏は特にこの計画の弱みとして、欧州委員会が拘束力のある法律を導入するのではなく、EU諸国のシステム構築を各国の裁量に任せるリコメンデーション(提言)の作成に留まる点を挙げている。「欧州域内企業がオンライン配信に関する域内共通のライセンスを取得できる競争的メカニズムが必要だと考える。しかしこの案ではそれを実現できない。加盟国にわずかなプレッシャーを与えるだけだ」(同氏)
同氏によれば、欧州委員会が今年初めに検討していた計画は、集団的権利管理に携わる業界の働き掛けによって「効力を弱められた」という。
だが欧州委員会の戦略は、作家やアーティストの権利を代表する団体からは用心深く迎えられている。「リコメンデーション(提言)はディレクティブ(指令)よりもいいと思う。なぜならテクノロジーは日々急速に進歩しており、私たちにはそれに対応できる柔軟性が必要だ。ディレクティブでは、(特定のモデルに)縛られるリスクがある」と話すのは、European Grouping of Societies of Authors and Composers(GESAC)のイザベル・プロスト法務顧問だ。同氏は欧州委員会によるリコメンデーションの詳細に関するコメントは最終テキストを見るまで控えるとした。
欧州委員会域内市場部門ディレクター、ジャクリーン・マイナー氏は、10月7日にロンドンで開催された著作権に関するカンファレンスで、「欧州における現行の著作権使用許可モデルは、21世紀よりも19世紀寄りのものだ」と述べた。「インターネット時代により調和した新世代の著作権ライセンスモデルが必要だ」
さらに同氏は、商用オペレーターが取得するライセンスは、複数の法管轄区で保障されるべきだと主張した。こうすることで、著作権所有者のコンテンツを出来るだけ広範に配布できるとともに、著作権所有者が選べる権利管理者の選択肢が広がる。権利管理者は、ライセンスを公平な条件の下に供与しなければならない。リコメンデーションには、公正なライセンス料の配分ならびに効果的な紛争解決に関わる条項も盛り込まれる。
ただし、この主張にはEDIMAのハイムズ氏が反対している。「第三者による適切な裁定システムを求めたが、弱められてしまった」(ハイムズ氏)
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