米MicrosoftはRealNetworksとの提携により、デジタル音楽市場におけるライバル各社との競争力を強化できるだろう。だがアナリストによれば、市場でのApple Computerの独占的立場を弱めたいという点に関しては、Microsoftは依然として大きな壁に直面している。
Microsoftは独禁法違反訴訟の和解の一環として、RealNetworksに現金4億6000万ドルを支払うほか、自社のWebサイトでの販売促進も含めた各種サービスでさらに3億100万ドルをRealNetworksに提供する。だが観測筋によれば、今回の取引には、独禁法訴訟をめぐるMicrosoftの問題を解決する以上の影響力がありそうだ。今回の取引は、オンラインオーディオ/ビデオ市場でAppleのiTunesに対抗するための有力な提携関係も提供する。Microsoftは和解の一環として、RealNetworksのデジタル音楽配信サービスRhapsodyを自社のMSNの各サイトでサポートすべく、ライセンス契約を拡張している。
Yankee Groupのアナリスト、マイク・グッドマン氏は次のように指摘している。「これで、デジタル音楽市場の混乱がある程度解消されるだろう。Rhapsodyの背後にMicrosoftの影響力が加わることになる」
今回の提携により、RealNetworksの製品は力を増し、Virgin MusicやMusicMatch、AOL Music、Yahoo! Musicといった競合他社の技術よりも有利な立場に置かれることになる。
「Rhapsodyサービスの申し込みが加速するだろう。Windows Media Audio(WMA)ベースの音楽サービス全般の採用を促すことにもなるかもしれない」とグッドマン氏。
一方、JupiterResearchのアナリスト、マイケル・ガーテンバーグ氏によれば、Microsoftは今回の提携を通じてライバル各社に対する競争力は高められるものの、Appleの市場シェアを切り崩すのはたとえわずかでも難しいはずという。
「これまでもMicrosoftは自社の技術をライセンス供与してきたが、人気は出ていない。技術はあるのに、売り方が下手なのだ」と同氏。
Appleに狙いを定めるとなれば、Microsoftは新たな問題にも取り組まなければならない、とガーテンバーグ氏は続けている。なかでも問題なのは、Microsoftは複数のパートナー間でバランスを取らなければならない点だ。「ライセンスを供与する立場の企業には、複数のパートナーが存在するため、えこひいきのないよう気をつけなければならない。Appleはどことも提携せず、技術ライセンスも供与していない。その点でAppleは有利なのだ」と同氏。
IDCのアナリスト、ダン・クズネツキー氏は、MicrosoftはAppleのQuickTimeとの戦いで善戦できるだろうと指摘している。2005年の世界市場におけるクライアントOSの出荷量でWindowsは全体の約94%を占め、Linuxのシェアは約3%、Mac OSのシェアは2%となっている。
「違いは、フォーマットをサポートするコンテンツデベロッパーの数によるものだろう」と同氏。
MicrosoftはRealNetworksとの提携が、デジタル音楽市場における自社の立場だけでなく、解決にてこずっている欧州委員会との独禁法訴訟の決着にも大きな影響を及ぼすことを期待している。
RealNetworksは今回の和解の一環として、欧州での対Microsoft訴訟からも手を引くことになっており、IBM、Oracle、Nokiaなどが欧州連合に対し、徹底抗戦を促しているものの、一部の知的所有権擁護派は、今回の和解を受けて欧州委員会が新たな方針に切り替える可能性を示唆している。
ソフトウェア特許に反対する欧州の活動家で、NoSoftwarePatents(NSP)キャンペーンの発起人でもあるフロリアン・ミューラー氏は次のように語っている。「欧州委員会による独禁法訴訟は既に十分におかしなことになっている。これ以上、こっけいさを増す前に、欧州委員会はこの訴訟の終了計画を検討すべきだ。彼らがこれまで行ってきたことは、逆効果をもたらしているだけだ。欧州にとってプラスになっていない」
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.
Special
PR