ITmedia NEWS >

音楽で成功したAppleはテレビでも成功するだろうか?

» 2005年10月13日 17時48分 公開
[IDG Japan]
IDG

 携帯音楽プレーヤーは、米Apple Computerのスティーブ・ジョブズCEOがデジタル音楽に参入する前から存在していたが、最初のiPod発表から4年、今ではAppleがMP3プレーヤー市場の75%を占めている。携帯ビデオ市場に乗り込んだからには、Appleはテレビという広漠とした荒れ地でも音楽での成功を再現できるだろうか?

 Appleによる10月12日の盛大なテレビ事業発表記者会見後に取材したアナリストらによると、Appleは同社に有利に働く要素を幾つか持っているという。同社のiTunes Music Store(iTMS)のユーザーは、ABCの5つのTV番組からの番組、ミュージックビデオ、ジョブズ氏が経営するPixar Animation Studiosの短編映画をPCとMacにダウンロードし、新世代のiPodに転送することができると、米カリフォルニア州サンノゼで開かれたメディアイベントでジョブズ氏は語った。

 技術系調査会社Endpoint Technologies Associatesのロジャー・ケイ社長は、まず、Appleは道をそれてiPodのビデオ専用バージョンを製作しようなどとはしなかったと指摘する。新iPodは、まさに昨年リリースされたiPod photoから進化したものだと同氏は言う。

 「Appleとしては非常に慎重な動きと言える。同社は現行のハイエンドのiPodを、価格は据え置きのまま容量を増やし、ビデオ機能を追加した製品と置き換える」とケイ氏。一部のiPodユーザーは常に、より小さいiPod nanoやiPod shuffleよりも、数千曲を再生できる大容量のiPodを選ぶ。そこでAppleはこうした大容量製品に追加料金なしでビデオ機能を追加することにしたのだ、と同氏は言い添えた。

 米調査会社Envisioneering Groupの主席アナリスト、リチャード・ドハーティ氏は、Appleはさらに、アナリストが最も困難だと見ていた障害――ABCに番組提供している制作会社とのコンテンツ交渉――も克服していると指摘する。

 Creative Technology、Handheld Entertainment、Archosといったほかの企業は、テレビから録画したりインターネットからダウンロードしたビデオを再生できる携帯ビデオプレーヤーを既に開発している。また、Movielinkなどの企業による始まったばかりのサービスで、ユーザーは映画やテレビ番組をPCやMacにダウンロードすることができる。

 だが、iTunesは約2億人のユーザーを抱えており、彼らは既にAppleの音楽ダウンロードモデルに慣れたメインストリームのユーザーだと、Current Analysisの上級アナリスト、サン・ダム・バフナニ氏は指摘する。「Appleはかなりの大観衆を相手に商売をしていることになる」

 「Desperate Housewives」や「That's So Raven」といったiTMSで入手できる人気番組は、PCやMac上でも見ることができ、それはより多くのユーザーにとって魅力となるだろうとバフナニ氏は言う。ティーンエージャーなどはむしろiPodの携帯性に引かれるかもしれない、と同氏。

 Appleは年末前に、さらにほかのテレビ局やCATVチャンネルとiTMSを連携させる発表を行うだろうとドハーティ氏は言う。業界中の映像のプロは、ビデオの製作と編集にAppleのQuicktime形式を選んでいると同氏。

 iTMSの新しいビデオサービスは、マスマーケットにおいてビデオコンテンツをダウンロードしたいという要求がどの程度大きなものかに関する重要な早期テストとなるだろうというのがアナリストらの見解だ。他社による初期のダウンロードサービスはほとんどのPCユーザーの関心を得ることができず、携帯ビデオプレーヤーもまったくヒットしていない。Appleはその実績あるブランドと配布方法により、最終的に健全なビデオダウンロード市場となるとほとんどが信じている場所への足掛かりを得るだろうと彼らは言う。

 実際の利益が得られるのはもう少し先、映画会社が参加するときになるだろう、とケイ氏は言う。

 「結局、さらに興味深いのはハリウッド映画の大作だ。封切り直後の映画をコンピュータでダウンロードできるようにするのは誰だろう?」とケイ氏。映画会社は彼ら自身のデジタル配信モデルを構築しようとしており、AppleとABCの動きを慎重に見守るだろうという。

 Appleがテレビでも音楽と同様の成功を収めれば、映画でも優位に立てるだろう、とケイ氏は言う。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.