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れこめんどDVD「オペラ座の怪人」DVDレビュー(2/2 ページ)

» 2005年10月21日 10時17分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 実際、以前に映画化されたときには悲恋の物語ではなく、オペラ座で発生する謎の連続殺人を主題として押し出した一種のホラー映画になっていた。それが現在のように悲恋の物語として知られるようになったのは、今回の映画の元になっているロイド=ウェーバー版オペラ座の怪人によるところが大きい。悲しいラブストーリーにアレンジされたシナリオ、音楽や観る者を興奮させる大がかりな舞台セットが大ヒットにつながった。

 よって本作も、細かなストーリーや演出面での整合性を云々とするよりも、純粋にエンターテイメントとして映像と音楽を楽しむ作品として捉えた方が楽しめるはずだ。演出も一部に映画ならではの手法が盛り込まれ、舞台をそのまま映画にしただけでは説明不足となるような部分も上手に見せている。

 ロイド=ウェーバー自身がプロデュースした音楽や壮麗な撮影セット、100人のオーケストラによる演奏を楽しむ事ができるなら、これまでミュージカルに今ひとつなじめなかった人にも受け入れられる作品になっているのではないだろうか。

サラウンド環境を存分に楽しめる素晴らしい音響効果

 その細かなディテールにこだわった舞台セットで展開される映像も素晴らしいが、何より本作品で楽しみたいのは、その音響面。冒頭、朽ちたオペラ座で行われるオークションから一気に過去へと遡るシーンがあるが、ここでの迫力は数ある映画の中でも屈指の迫力だ。

 もし優れたサラウンドオーディオシステムを所有しているなら、そのシーンだけでも心臓が飛び出るような迫力を体感できるだろう。ここで引き込まれたら最後、ロイド=ウェーバーの最高傑作とも言える音楽が観る者をつかんで離さない。

 劇中の歌は、主要な出演者すべてが吹き替えなしで挑んでいる。ロンドン公演オリジナルメンバーではサラ・ブライトマンが演じていたクリスティーナに、撮影当時16歳だったエミー・ロッサムはさすがに歌の上手さでは敵わない。しかしその可憐さや儚さ、そして必死に歌う健気さは、その若さ故の味としてポジティブに感じた。ロック調の発声で歌い上げるバトラーの怪人も、なかなか味がある。

 なんでもロッサムは映画俳優になる以前、オペラ歌手を目指してトレーニングを積んでいた事もあるとか。この作品はオペラではなく、あくまでミュージカルである。個人的にはロッサムの方が役には合っているのではないか。そう思わせるだけの実力は感じさせる。

 DVDに含まれる音声トラックはDolby DigitalとDTS。DTSはハーフレートの768Kbpsである。DTSの方が迫力を前面に押し出した味付けがなされており、オープニングの迫力やクライマックスにおける緊張感は高い。しかし音楽を中心とした映画全体のバランスから言うと、Dolby Digitalに軍配が上がる。この両方を聞き比べてみるというのも面白い。

 聞き比べという意味では、やや高価ではあるが「コレクターズ・エディション」に収められたサラ・ブライトマンによる「The Phantom of the Opera」も見逃せない。舞台挨拶でロイド=ウェーバーのピアノ伴奏でエミー・ロッサム&パトリック・ウィルソンが「All I ask of you」を歌ったり、舞台版オペラ座の怪人のバックヤードを記録した映像など、ミュージカルとしての「オペラ座の怪人」を愛するファンにはたまらない内容が特典映像として収められている。

 ミュージカル好き、映画好きはもちろん、自宅で映画を楽しもうとAV機器を買いそろえたばかりという人は、その実力を試すための1枚としても、是非コレクションに入れておきたい作品である。

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