米下院委員会は、テレビ放送局がデジタル放送に移行する期限を可決した。だがその期日は、1週間前に上院委員会で設けられたものよりも早まっている。
下院エネルギー商業委員会は10月26日遅く、放送事業者がDTV(デジタルテレビ)に移行する期限を2008年12月31日とする法案を承認した。その結果空きとなる700MHz周波数帯は緊急対応機関と商用無線ベンダーに提供される。
ジョー・バートン下院議員(テキサス州選出・共和党)はリリース文で次のように述べた。「2009年1月1日木曜日は、米国全土にデジタル放送が送られる日となる。テレビ誕生以来、私たちの家に送られてきた地上アナログテレビ信号はその前夜に終了し、数年前から開発されてきた素晴らしい技術革新がいよいよ登場することになる」
ところが上院商務・科学・運輸委員会では10月20日、法案が定めるデジタル放送への移行期限を2009年4月7日で承認した。デジタル放送への移行後、地上波を受信しているアナログテレビはコンバータを装着しない限り機能しなくなる。4月の移行時期は、2大人気テレビイベントであるNFLのスーパーボウルと全米大学のバスケットボールトーナメントが放映された後となる。
放送事業者が返却する60MHz帯の競売は少なくとも100億ドルを創出すると見込まれている。現在複数のIT企業が、新しい周波数帯は次世代無線サービス構築に最適だとし、DTV移行に向けた明確な期限を早く決めて欲しいと強く要請している。
IBM、Microsoft、Intelなど19社が加盟する業界団体High Tech DTV Coalitionは、下院委員会の決定を賞賛した。「確実な期日という重要な共通基盤を二大政党が支持していることを喜ぶとともに、実施にあたっての細かい違いはこの法的プロセスが進められる中で解決できると確信している」と、同団体のエグゼクティブディレクター、ジャニス・オブコウスキ氏はリリース文で述べた。
「明確な期限」の支持派は、警察や消防署など第一次対応機関は、都市部における複数の緊急対応機関との相互運用性を改善する上で新しい周波数を必要としていると主張する。2001年の9.11同時多発テロ以後、米政府が設置した「9・11委員会」は、緊急対応機関に無線周波数を追加すべきだと提言した。9.11事件の際、複数の緊急対策機関がそれぞれ使用している周波数が異なったため互いに連絡を取り合うことができないケースが多発したからだ。
現行法の下、放送事業者は現在保有しているアナログ周波数帯を2006年12月31日までに返却しなければならない。ただし、デジタル信号を受信できる世帯が市場の85%に達しない場合は、引き続きアナログ周波数を使用することが許可されるという条件付きだ。
1997年12月、連邦通信委員会(FCC)は、テレビ放送事業者がデジタル周波数を獲得する代わりに700MHz帯の一部を公共安全と新規事業の利用に割り当てることを可決した。現行法に批判的な向きは、DTVに移行する明確な期限を設けない限り、現行法が定めるデジタル信号普及率85%は達し得ないと主張している。
下院における次なるステップは本会議での可決だ。本会議で承認された後も下院と上院の法案が統一できなかった場合、両院議員で構成される協議委員会で審議される。両院が妥協案を承認した後、同法案はブッシュ大統領の署名を経て制定される。
この下院法案は、第一次対応機関による新規機器の購入に5億ドルの予算、コンバータ購入の助成金として9億9000万ドルを割り当てる。テレビ保有者は推定価格50ドル〜70ドルのコンバータを購入すると40ドルのリベートを受けられる。米行政管理予算局(CBO)では、CATVサービスに加入していないアナログテレビの所有世帯は全米で1500万と推定しており、下院の予算はこのデータに基づいている。CATVサービスはデジタル信号をアナログテレビ用に変換できる。
しかし一部の消費者団体は、米国でコンバータを必要とするテレビは8000万台と推定している。上院によるDTV移行関連予算では30億ドルがコンバータ購入の助成金として割り当てられている。
下院法案では、2007年3月1日までに13インチ以上のスクリーンを装備するすべてのテレビにデジタルチューナーを取り付けることを義務付けている。一方FCCが大型テレビに対して設定している期限はもっと早い。
下院委員会では、緊急対応機関による700MHz帯の無免許帯(テレビの2〜51チャンネル)の使用を許可するというジェイ・インスリー議員(ワシントン州選出・民主党)が提出した修正案も承認した。
高い周波数帯である700MHz帯はテレビの60〜69チャンネルを網羅する。
現在多くの米国市場で、低めの周波数の大部分が十分に活用されていない状態にある、とインスリー氏はプレスリリースで述べている。
なお、これまでDTV移行の明確な期限に反対していた全米放送協会の担当者に取材を申し込んだが、本稿掲載時までに返答は得られなかった。
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