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コラム
» 2005年12月02日 10時41分 公開

西正:放送事業の「外資規制」にある矛盾 (1/2)

放送事業に外資規制が課せられることは珍しくはない。ただ、わが国では電気通信役務利用放送事業者に外資規制が課せられていない。このため、東経110度CS放送のHD化に伴って、改めて外資規制のあり方について検討する必要がありそうだ

[西正,ITmedia]

放送事業と外資規制

 放送事業に外資規制が課せられることは、先進諸国に限らず決して珍しくないことである。クーデターなどが起こった際には真っ先に放送局が占拠される。これはラジオ時代から顕著なことであったが、テレビ放送ならなおさらであり、マスコミとして一斉同報的に情報伝達するのに優れた手段だからである。

 これは国民に対する放送事業の影響力の大きさを物語るものであり、どれだけネットが普及したところで、その点についての考え方は変わらないはずだ。

 わが国における放送事業者への外資規制は、放送法、電波法で20%未満とされている。現在は外国企業が直接保有する株の合計比率だけを「外資比率」と見なしており、議決権ベースで20%未満に制限している。

 10月の法改正により、外国企業の日本法人などによる持ち株比率も外資比率に算入し、子会社などを通じた間接支配も規制の対象とすることとなった。

 総務省によると、例えば外国企業が50%出資する日本国内の子会社が、ある放送局の株を20%取得する場合、同外国企業の放送局の持ち株比率は10%と見なされるようになる。既に外国企業が本体として保有する株の合計が10%を超えていれば、子会社分も加え外資の合計比率が20%を超えてしまい、認められないことになる。

 また、放送局を傘下におさめる持株会社が設立された際には、持株会社に対しても外資規制が課せられる。

 ただ、わが国の放送事業には先進諸国間でも珍しいほど多くの種類がある。そして、一部には外資規制を課せられない事業体も存在していることから、新たな放送技術の進展とともに混同が生じ、それが矛盾を起こしている。

外資規制の実態

 外資規制を課せられているのは、地上波放送事業者、BSアナログ放送事業者、BSデジタル放送に係る委託放送事業者、受託放送事業者、CSデジタル放送に係る委託放送事業者、受託放送事業者、有テレ法の下のケーブルテレビ事業者である。

 委託・受託の区分自体が世界に稀な制度であるため、対象となる放送事業者の種類が多くなる結果となっている。ちなみに、CSデジタル放送のプラットフォーム事業者は放送事業者ではないため、外資規制の対象とならない。

 一方で、近年のデジタル技術などの進展により、通信衛星や光ファイバーなどによる電気通信回線の広帯域化が急速に進展。電気通信事業者の広帯域な電気通信回線を通信にも放送にも利用することが現実に想定されるものとなったことから、2002年1月より電気通信役務利用放送法が施行されることとなった。

 これは通信と放送の伝送路の融合の進展に対応し、CS放送および有線テレビジョン放送の設備利用の規制緩和を行うため、電気通信役務を利用して放送を行うことを制度化して可能としたものである。

 本法の施行により、CS放送においては、参入の容易化によって多種多様な事業者が出現することによる多彩な番組の提供、競争による番組の質の向上が、一方、ケーブルテレビにおいては、電気通信事業者の回線利用による初期投資の負担軽減、サービスの広域化、多チャンネルで多彩な番組の提供が容易になることなどが、それぞれ効果として期待されるようになった。

 東経124度、128度CSを使う放送事業や、ケーブルテレビ事業に新規参入する事業者に限らず、既存のCSの委託放送事業者やケーブルテレビ事業者が、役務利用放送事業者に移行することも奨励されることになった。わざわざ奨励されるのは、新法が施行された時の習いであり、許認可事業ではよく見られる現象である。

 注目を要するのは、新法に基づく電気通信役務利用放送事業者には外資規制が課せられないため、100%外資の事業者も放送事業に参入することが認められたという点である。

 それもCS放送事業とケーブルテレビ事業に限定されて適用されるものであり、地上波放送やBS放送については相変らず外資規制が課せられていることから、行政サイドがそれぞれの放送事業に対する考え方を違えていることも見てとれる。

 単純に国民に与える影響力の違いという理由であるのかもしれないが、電気通信役務利用放送事業者についての事業規模に何の限定もないことから、いずれは大きな影響力を持つ事業者が現れることも考えられる。

 こうした法制度上の切り分けは往々にして、時代の経過とともに、大きな矛盾へと育っていく元となりがちなものである。

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