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日本ではHDアナログ出力制限が無効に――AACSのコンテンツ運用規定が決定(1/2 ページ)

» 2005年12月19日 14時04分 公開
[本田雅一,ITmedia]

<訂正>

初掲載時、リージョンコードの運用規定がAACS内で決められているように報道しましたが、実際にはBDアソシエーションあるいはDVD Forumで話し合われている議題でした。リージョンコードの導入が決定しているのはBD-ROMについてであり、HD DVD-ROMについては正式決定していません。

 お詫びして記事の内容を訂正させて頂きます。

 HD DVDおよびBlu-ray Discが採用する著作権保護の枠組みのうち、コンテンツ運用ルールが先週、AACS(Advanced Access Content System)内でまとまり、ライセンス先(DVD ForumおよびBD Association)へと仕様のレビューが渡った。この中にはHD映像のアナログ出力に制限に関するルール、およびリージョンコードに関する内容が含まれる。この中にはHD映像のアナログ出力に制限に関するルールに関する内容が含まれる。またBDアソシエーション総会にて、BD-ROMのリージョンコードが確定した。

 コピー防止技術を伴わないアナログ映像出力(D3以上)を制限できるICT(Image Constrain Token)は、AACSに準拠したソフト、ハードウェアが対応しなければならないとなった。ただし、ICTの利用を制限する規定がある国では、市販ソフトの中でICTを使用してはならないという特例が設けられる。特例措置は少なくとも2011年まで継続される。

 また廃止される方向で調整が続けられていたリージョンコードに関しては、一部映画スタジオ側の強い抵抗から、少なくともBD-ROM規格には残される事になった。ただしリージョンの分割はDVDとは異なり、日本を含む東アジア(中国は除く)は米国と同じリージョン1に分類される。HD DVDのリージョンコード運用はまだ決まっていない。

実質的にアナログ出力制限は行われず

 AACSのコンテンツ運用ルールの中で、最も注目されていたのがICTが導入されるか否かだった。ICTはアナログ出力解像度を制限するためのフラグで、デジタル放送のフォーマットで導入されている。アナログ映像信号のコピー保護技術はD3以上の映像信号には利用できない。このため放送側がICTフラグを立てると、チューナーとテレビをアナログ信号で接続している場合、ハイビジョン本来の解像度で放送を見ることができない。

 つまりデジタル接続でしか高解像度の映像を楽しめない。ただし、現時点でICTを利用して放送を行っている国はない。

 AACSで議論されていたのは、デジタル放送と同様に販売するパッケージソフトにICTを導入するか否か。ICTがするコンテンツベンダー側と、デジタル接続が可能なテレビが十分に普及していない段階でICTを規格に入れることはできないとする家電ベンダー側に分かれての議論となっていた。

 最終的にはICT導入を譲らないワーナーブラザース(元々ICT導入を提案したのはワーナーだった)に、どのように妥協を迫るかが鍵となったが、結局のところワーナーは規格内へのICT導入は譲らなかった。AACSに準拠するハードウェアは、すべてICTへの対応を迫られる。

 ただし「法律あるいは法律に準ずるルールにより、ICTの利用を制限されている国は、そのルールに従う」との条項が2011年まで(正確には2010年12月31日発売のソフトまで)の期限付きで盛り込まれた。

 実は日本ではARIBの規定により、ICTでハイビジョンコンテンツのアナログ出力解像度の制限を行ってはならないというルールがあるという。市販パッケージソフトにもこのルールが適用されるため、日本では2011年までICTを用いた市販ソフトの販売はできない。

 つまり、日本ではアナログ出力解像度の制限は2011年まで実質的に行われない。

 2011年以降に関しては状況(組織的な違法コピーの状況やパッケージビジネスの状況)を考慮した上で見直す事になっているが、家電各社、映画スタジオともに、ICTが利用されることはないとの楽観的な見通しを持っているという。

実はコンテンツベンダー側も望んでいないICTの利用

 AACSに参加するコンテンツベンダーは、ワーナーブラザースとウォルトディズニースタジオ。加えてソニーが傘下にソニーピクチャーエンターテイメント(SPE)を抱える。このうちディズニーとSPEはICTは必要なしとの判断を既に下していた。またAACSに参加していない20世紀フォックスも、ICTは不要、導入されても使用しないと話している。

 となるとワーナー……となるが、実はワーナーもICTは仕様として盛り込まれる事を望んでいるが、実際に利用するとは話していない。AACSは技術仕様を検討する組織だが、マーケティングの現場では売れない商品、批判を浴びる可能性の高い商品は販売できない。

 たとえば初期段階でICTが使われる事があったとしても、そこで消費者の反発が強ければ(ライバル会社が一様にICT非仕様を明言している中で)ワーナーだけが制限することはできない。デジタルインタフェースが日本よりも普及されているとされる北米だが、絶対的な普及率となるとさほど高くない。

 日本では2011年までICTの利用が制限されるが、上記のような状況の中にあって少なくとも2011年までには、“通常はICTオフで販売”が日本以外でも常識化すると見られる。2011年という時期は日本の地上アナログ放送停波をにらんだものだが、それまでにデジタルインタフェース付きのテレビが普及しているかと言えばおそらく無理だ。

 現時点でさえ、デジタルインタフェースを備えていないテレビが販売されている中で、ビジネスを続けるにはアナログ出力は認めざるを得ない。日本のデジタル放送は、突然、コピーワンスの利用を放送局側が一方的に発表したという過去があるため、警戒感を強めている読者も多いことだろう。しかし、映像パッケージは放送とは異なり、エンドユーザーに直接販売する商品だ。パッケージソフトにおいてICTは有名無実化するというのが、家電ベンダーだけでなく映画スタジオも含めてのほぼ一致した意見だ。

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