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オプティキャストの新展開が持つ「意味」西正(2/2 ページ)

» 2006年01月20日 08時47分 公開
[西正,ITmedia]
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 そこで、オプティキャストから営業部隊を切り離し、放送事業者としてのオプティキャストは引き続きスカパー!が100%を出資する手法が登場してくるのである。切り離された営業部隊とであれば、NTTも合弁会社を作ることができる。

 その合弁会社がNTT東西をはじめとするNTTグループ各社と提携すれば、NTTグループ各社の陣容でピカパーを売ることができるようになる。NTTがBフレッツの広告宣伝を、テレビ、新聞、雑誌、ネットなどあらゆる媒体で行っていく際に、ピカパーもセットで宣伝することができるようになる。営業新会社がBフレッツとピカパーを売ってくれば、それによる収益は、Bフレッツ分はNTTに、ピカパーの分はオプティキャストに入ることになる。

 NTTがトリプルプレイを実現するパートナーとしてオプティキャストと組んでいくためには、こうした営業会社を設立することが早道であると明らかになったことの結実と言える。

多様な形態を採れるオプティキャスト

 典型的な有線役務利用放送事業者たるオプティキャストは、NTTのBフレッツとだけ組むわけではない。オプティキャストには大きく分けて4つの形態がある。

(1)NTTの光ファイバーと組む

(2)電力系の光ファイバーと組む

(3)770メガの帯域を持つCATVにスカパー・トラモジのヘッドエンドを置いて、スカパーの全チャンネルを流す

(4)トリプルプレイの実現を希望する通信事業者に、放送部分だけを代行して提供する

 NTTとの合弁で営業会社を立ち上げたことから、主力になるのは(1)の形態だろうが、NTTが進出しない地域での事業展開としては、(2)、(3)、(4)も十分にあり得る。中国電力系のエネルギアコムと広島県福山市で実施したサービスは(2)の典型である。

 また、昨年12月からスカパー傘下のCATV会社として新たにスタートしたケーブルテレビ足立の例は(3)の典型と言えよう。デジタル化投資に苦しみながらも、大手MSOの傘下に入りたくないCATV会社にとって、オプティキャストと組むのも1つの方法となるため、今後もこの形態は次々と出てくることになるだろう。

 また自治体の情報化予算で光ファイバー網を既に形成している地域などでは、そこにNTTが進出していくメリットが少ない場合も多い。そうした際には、自治体から運営を任された事業者とオプティキャストが組んでいくケースも多々あろう。その際にも、(2)、(3)、(4)のスタイルが採られることになるだろう。

 オプティキャストの放送サービスでは、地上波デジタル放送とBSデジタル放送はパススルーで、スカパー!の全チャンネルはトラモジで利用世帯に入っていくことになる。2台目以降のテレビに個別に専用のセットトップ・ボックスを設置する必要はない。

 ピカパーをセットで売るよりもBフレッツを単体で売った方が低価格であることは間違いないが、トリプルプレイが標準となっていることからすると、ピカパーをセットで買わないと、放送部分だけはCATVと契約しなければならなくなる世帯も多い。別々に契約するくらいなら、Bフレッツとピカパーをセットで利用する方が安上がりになるだろう。

 今春から戸建て展開も始めるという計画も、ピカパーを中心に物を考えると大変そうに思えるが、Bフレッツは既に単体で戸建て向けに売られている。今後の営業の際には、ピカパーもセットにして売れるようにするだけなので、戸建てだからといって新たな負担が増えることはない。最近はBフレッツも申し込んでから接続される期間は相当短縮されたようである。既にBフレッツを単体で契約してしまっているユーザーにとって、2本目の光ファイバーを入れることに手間も時間もコストも大きくかかる心配はなさそうだ。

 IP方式で地上波の再送信が認められることになった暁にも、光が1本で済むことになるだけなので、返って安上がりになることこそあれ、2本入れてしまったことが裏目に出ることはない。

 既存の有線モデルとは違い、スカパーの全チャンネルが入ってくることも魅力である。スカパーのチャンネルについては契約してもしなくても自由だが、専門チャンネルを視聴しようと考えた際に、自分の好みのチャンネルを選択して視聴できることのメリットは大きい。

 オプティキャストとNTTの合弁営業会社が設立されることにより、NTTのBフレッツ販売体制はさらに強固なものとなっていく。光ファイバーを巡る販売競争は加速していく一方になりそうである。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「IT vs 放送 次世代メディアビジネスの攻防」(日経BP社)、「視聴スタイルとビジネスモデル」(日刊工業新聞社)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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