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CESで分かったデジタルの新しいトレンド麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/5 ページ)

» 2006年01月31日 23時59分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 世界最大級の家電の祭典「International CES(Consumer Electronics Show)」が、今年も新年早々に開催され、さまざまな新製品/新技術/トレンドが紹介された(詳細は2006 International CES特集を参照)。

 デジタルメディアのトレンドをいち早く、しかも分かりやすく紹介してくれる麻倉怜士氏の月イチ連載「デジタル閻魔帳」。毎年1月前半は米国で過ごす“CESの水先案内人”麻倉氏に、CES取材を通じて明らかになった“2006年のデジタル家電”を、最新トレンドとともに語ってもらった。

photo 2006 International CESのプレスセンターにて

――今年のCESは昨年にも増して大盛況で、ものすごい混雑ぶりでしたね。

麻倉氏: 今年のCESは別会場(サンズ)が増設されるなど、規模も拡大して行われました。まさに会場が人、人、人。来場者は当初13万人との予測が発表されていましたが、3日目には15万人と上方修正するほどでした。今年は昨年に比べて交通事情がとても悪くなったという印象を受けました。例えば出展者のソニーの人は、タクシーがいくらまっても来ないので、会場から10キロ近く離れたバリーズホテルからなんと歩いて毎日来ていたそうです。延々45分かかったようでしたが、その方がタクシーで来るより早くて確実ということでした。

 以前のCESは家電製品のトレードショー(商談会)という位置づけでしたが、今は商談の場所も多様化してほかの時期にやるようになりました。そしてCESは従来のトレードショーから技術をアピールして自社のイメージを高める場となり、“トレンドを作るショー”に姿を変えてきた感があります。そういう意味では今回のCESも、すべてのデジタルAVのトレンドが雄弁に指し示されるデジタルの祭典というわけですね。

photo 大盛況の会場の中でも、ひときわ来場者を集めていたサムスンブース

――今年のCESの特徴を教えてください。

麻倉氏: 今年のCESのトレンドは大きく3つあります。1つは「次世代DVD戦争」、2番目は「大画面化」、3番目は従来からいうところのマルチメディア、これを私は「3つのA(Anytime、Anywhere、Anyhow)」と名づけました。

 まずはBru-lay DiscとHD DVDの次世代DVD争いですが、この対立では昨年から数カ月おきに大きな動きがありました。もっとも昨年までは“フォーマットの戦い”でしたが、今年のCESでは製品の戦い、ソフトの戦い、になってきました。それは今回の両陣営の展示内容にハッキリ表れています。

――まずHD DVD陣営の動きを教えてください。

麻倉氏: HD DVD陣営の旗振り役である東芝は、最初のHD DVDプレーヤーに799ドル、普及機には499ドルという値付けをしてきました。前回のCESで発表した昨年1月の段階では、プレーヤーは1000ドルでいくということでしたが、よりアグレッシブな方針を選んだわけです。

 極めて戦略的な値付けで、赤字は必至でしょうが、はじめから大量に販売して、店頭シェアを押さえようという作戦ですね。全米5000の販売店の店頭で積極的に販売促進を行う構えです。ただし500ドル以下という価格も、現状のDVDプレーヤーの平均価格を考えると、まだまだ高価です。アベレージユーザーは200ドル以下にならないと手が出ない。500ドル以下という価格設定は戦略感はありますが、実際にフタを開けてみて一般ユーザーがどういった反応をするかは未知数です。

 また、フルHDのテレビを所有しているユーザーはまだごく一部なので、プレーヤーを購入しても最善のリソースを映し出すことはできないでしょう。つまり、アベレージユーザーには値段が高過ぎるし、その上のマニアユーザーもテレビ自体は完全対応していないという状況なのです。まだ過渡期である状況でHD DVDがどう戦っていくかという点に注目したいですね。

photo 2006 International CESのプレスセンターにて
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