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コラム
» 2006年02月10日 14時44分 公開

西正:放送局、映画会社が本当に苦労する広告宣伝は? (1/2)

映画館で映画を見るのは有料だし、NHKの番組を視聴するには受信料を払うべきだということになっている。広告宣伝が関係するのは民放のこと、CM製作は広告会社の役割だと思われている。しかし、放送局や映画会社は全く別の意味での広告宣伝に苦労している。

[西正,ITmedia]

初回から高視聴率の連ドラがある理由

典型的な例はテレビ局が3カ月単位くらいで放送している連続ドラマである。そもそも番組が面白いから高視聴率をマークすることができるのか、高視聴率だから番組が面白いのかの区別が重要である。どちらも同じことを意味しているようで分かりにくい表現だが、実例を踏まえて考えると両者の違いが大きいことに気付かされる。

 連ドラの初回の視聴率が20%を超えると、それなりに話題となる。番組が面白いから、そういう数字が残ったのだろうと解釈されがちである。しかし、ドラマに限らず、テレビ番組が面白いか面白くないかは、見たから分かることであり、見る前から分かるはずはない。

 連ドラであっても、2回目以降で高視聴率をマークできることに不思議さは感じられない。初回を見て面白いと思った人たちの口コミも含めて、マスコミなどでも話題になるからである。もっとも初回を見逃した人が2回目から見て楽しめるのかどうかは疑問だが、テレビ局側もそれを意識してか、初回を見逃した人向けに、連ドラの放送期間中に昼から夕方の時間に再放送を行うようになってきた。

 だが、見てみなければ面白いかどうか分からないはずの番組が初回から高視聴率をマークすることは、理屈から考えれば不思議な話である。つまり、放送内容が分かる前段階から、既にその番組を見ようと考えた人が20%を超えていたことになる。

 そうした現象が起こる理由は、テレビ局が事前に行う番宣(番組宣伝)の効果が結実したということである。3カ月クールの連ドラも終盤にさしかかってくると、新番組の宣伝が始まる。主役は誰で、主役級の登場人物が誰と誰であるということがピーアールされ、視聴者の関心と期待を誘うような番宣が放送される。

 テレビ局にとっては簡単なことだと思われがちだが、番宣を流すことは次のクールでの高視聴率は狙えるものの、本来ならCMが挿入できる時間を割いていることになる。番宣を流しても一銭にもならないが、CMを流せば収益につながってくる。収益チャンスを逃してでも番宣を行うことは、次のクールで高視聴率をマークし、CM料を高くしようとの考えによるのだろうが、次のクールの番組がヒットするかしないかは、放送が始まってみないことには分からない。

 本来ならCMを挿入できる時間を割かなくても、新聞、雑誌、ネットなどで番宣を行えることは確かだ。ただ、そもそもはテレビ番組の話であるだけに、テレビを通じて視聴者にアピールする効果が圧倒的に大きいことは間違いない。

 冒頭の問いかけに戻れば、番組が面白いから高視聴率をマークするのでなく、高視聴率だから面白いと考える人が多いのである。初回を見るまでは面白いかどうか分からないのだから、番宣の効果として初回に高視聴率と評されるだけの視聴者を獲得することが重要になる。

 初回から見た人は番組が面白ければ引き続き見るであろうし、初回の放送が話題になれば2回目から視聴するようになる人も増えてくることになる。こうして3カ月間にわたって高視聴率をマークする連ドラが始まるという仕掛けである。

 番宣がいかに重要であるかは明らかであり、CMを流す時間を削ってまで番宣を行うことの意味は大いにあるということなのでる。

 番宣の巧拙次第で、肝心の番組の内容によらず視聴率が変わり得ることを考えれば、テレビ局にとっての番宣は非常に重要なミッションを背負っていることになる。

 テレビCMが飛ばされ易くなったとか、テレビCMに効果があるのかといった議論は多く見られる。CMについては広告代理店に丸投げしているように思われがちで、テレビ局の現場に広告宣伝のノウハウは少ないように言われることがあるが、番宣の重要性を考えれば、広告宣伝という行為についてのノウハウは大きく蓄積されていることになる。広告放送ではないNHKであっても、番宣には力を入れている。広告に無縁であるかのように見えるNHKも、番宣の重要性を認識していることを考えれば、そこに積み上げられてきたノウハウは大きいものであることが分かる。

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