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れこめんどDVD「セブンソード 特別版」DVDレビュー(2/2 ページ)

» 2006年02月24日 17時20分 公開
[飯塚克味,ITmedia]
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音楽も映像も効果的

 勢いを増長しているのは川井憲次の音楽にも依るところがある。日本では押井守作品でおなじみだが、アニメ以外で彼の派手な音楽がマッチするのは難しいと思っていた。しかし、この作品では役者のアクションと編集のリズムアップを川井の音楽が更に効果的に盛り上げている。

 また撮影の美しさも特筆ものだ。夜明けの紫色がかった空をとらえた美しいショットや、流れ星とともに馬を駆るカットなど、7剣士たちをカッコよく見せる映像が随所に挿入されている。その撮影はキョン・クォッマンが担当。ツイ・ハークとは製作・監督作品ですでに6作コンビを組んでいる。冒頭のモノクロトーンの中、旗や提灯だけを赤くして、立体的な画作りを行ったことも評価すべきポイントだ。

やっぱりアクションが命

 アクションはフー・チンジュ役のラウ・カーリョンが担当。見た目は完全な老人だが、きびきびした所作や剣さばきはほかの俳優たちの比ではない。ツイ・ハークのアクション映画と言えばジェット・リーと組んだ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズが有名だが、その第2作「天地大乱」を思わせる狭い通路での戦いや、ワイヤーワークもさりげなく使用されているのも、以前からのファンとしてはうれしい限りだ。

 ストーリー上の欠点は多々ある。天山にこもっていた4人の過去がなかなか明確に描かれず、そのため彼らのキャラが際立たなくなっている。また風火連城の恋人が高麗人で、焼印を体に押されていて、ドニー・イエンも同様の立場だったことが明かされるのだが、それほどストーリーに生きていないなどといった点だ。

 ほかにも女性関係のことや、村の過去の事なども描かれ、結果要素を盛り込むあまり、映画としてのバランスは崩れてしまっているのだ。映画を作るきっかけになったTVシリーズでは何と39話に渡って物語が描かれたようなので、上映時間153分とはいえかなり展開も駆け足な印象が残る。

 普通の映画であれば、そうした欠点は致命傷となるかもしれないが、この作品に関してはアクションシーンの素晴らしさが全てを帳消しにしていると言えよう。クライマックスの風火連城と剣を奪われたドニー・イエンとの一騎打ちも映画史上に残る名シーンだ。

 アクション好きでないなら、この映画の評価はかなり低いものになるかもしれないが、剣劇を見たいファンのお腹は充分に満たしてくれる。

 主演としてクレジットされているレオン・ライに触れていなかった。今回の役は沈着冷静な男で、クライマックスまで剣を抜こうとしない謎の人物として物語を引っ張るヤンという剣士だ。天山から降りる剣士の中で、唯一過去が明らかにもされる。これまでレオン・ライはどちらかといえばドラマ派の役者で、アクションは似合わないのではと思っていたが、この映画ではアクションも立派にこなせることを証明した。甘いロマンスはないので、女性ファンには納得いかないかもしれないが……。

 先に日本での興行はそれほどではなかったと書いたが、本国では大ヒットを記録。香港でのDVDも2枚組の限定版や、剣のフィギュアを付けたコレクター向けのボックスが発売され、またサントラCDはLPサイズの大型ジャケットの限定版が登場したりもした。

アジア映画らしからぬハイクオリティなDVD

 日本版の2枚組は最初に香港で出た限定版のDVDをかなり忠実に再現している。まず本編画質だが、ハリウッド映画を思わせるような発色の良さが印象的だ。特に先に記した冒頭のモノトーンから木漏れ日がさす川辺のシーンへの移り変わりがとても美しい。モノトーン場面に登場する赤提灯なども色がにじまず、安定した色合いとなっている。夜明けのシーンも美しく、夜間の暗めの場面でも色がつぶれた感じはない。

 アジア映画のDVDといえば、ちょっと前まで画質の悪い印象が強かったが、そうしたマイナスイメージを一新するクオリティと言えよう。

 音響も刀を振り回す音や、周囲で燃え盛る炎の雰囲気が丁寧に付けられ、サラウンドチャンネルがフル活用されている。是非大画面・大音量での再生を実践してもらいたい。

撮影風景、メイキングなど特典も充実

 特典は本編ディスクに日本版予告編と関連作予告編を大量に収録。新作「PROMISE/プロミス」や「SPIRIT/スピリット」をはじめ、他社作品もアジア系ならどんどん入れているので、とても得した気分になれる。

 特典ディスクには約1時間の特典映像が収められている。メイキングは標準的な作りながら、川で泥まみれになりながら演出するツイ・ハークや大規模なロケ隊の様子が垣間見え、興味深い。約20分の撮影風景集はメイキングと多少映像がダブっているが、見せ方が異なっているのでそれほど気にはならない。御輿のような台に乗って、馬のシーンを撮影したり、剣を使った場面でしょっちゅう役者の顔に剣や槍がぶつかっているのが痛々しい。

 監督インタビューでは映画企画の発端から、ロケ地の様子、テーマ性などが語られる。未公開シーンはいずれもカットしていいものと思えたが、風火連城が高麗人の恋人に想いを寄せ、昔の歌を歌わせようとする場面が彼の葛藤を感じさせ、面白かった。

 特典ディスクを除いた1枚組(通常版)も発売されている。わずか1000円の差なので、できれば2枚組がお勧めだが、作品のみでも充分な魅力を持つ作品だ。1回見ただけでは人物の整理がつかないかもしれないが、2回目の時は、キャラクターの色をより出している日本語吹替版で見てみると、より理解が深まるだろう。


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