日本のテレビゲームの歴史そのものである「ファミリーコンピュータ」のコントローラー部を縮小し、少しデフォルメした「ゲームボーイMicro」は、その外観を見ただけで心躍る30代以降の中年男女は多いだろう。もはや日本国内、いや世界中で広く認知されているプロダクト・デザインの代表だ。
実際の「ゲームボーイMicro」(ファミコンバージョン)は、オリジナルモデルのファミコン・コントローラー単体よりはるかに小さいが、高級感のあるメタリックな塗装に、ノスタルジックなファミコン・カラーの採用モデルだ。究極の玩具としての洒落たデザインは、「ダサくなる寸前」でストップした親しみやすくクールに偏らないベストデザインの一つだろう。筆者の重いiPodよりはるかに軽い「ゲームボーイMicro」が専用のゲームカートリッジを取り替えるだけで、あっと言う間に「ケータイ・デジタルミュージック・プレーヤー」に変身してしまう。
「ゲームボーイMicro」用の音楽、映像再生カートリッジである「PLAY-YAN micro」は、ゲームボーイ・アドバンス以降のモデルで共用出来る標準的なゲームカートリッジより少し奥行きが大きく、ゲーム機本体に挿入した状態で、本体から8mmほど溢れ出る。カートリッジ側面には、SDメモリーカード用のスロットがあり、カートリッジ手前にはヘッドフォーン接続の為のミニジャックが用意されている。内部に取り付けられたROMには音楽、映像再生用の専用ソフトウエアが記録されている。既に1GBのSDメモリーカードは6000円近辺で販売されており、一般的には、このSDメモリーカード1枚に200曲以上のデジタルミュージックが記録出来るだろう。
「PLAY-YAN micro」は、カートリッジ単体売りと「メディアステージ」と呼ばれる音楽、映像ファイルの再生・変換ソフトウエアとのキット商品の2種類が任天堂のWEBショップからユーザーにダイレクトに提供される。動画ファイル等の「PLAY-YAN micro」で再生を考えているなら、「メディアステージ」は、画像の最適化や変換をオリジナルファイルのメディアステージへのドラッグ・アンド・ドロップだけで簡単に実現してくれる。筆者は、iTunes経由、ポッドキャストで入手した「落語」や「ラジオ放送」なども、「ゲームボーイMicro」+「PLAY-YAN micro」を利用して通勤電車内で楽しんでいる。
「価格性能比」以上に「PLAY-YAN micro」の優れている点は、ROM内のアプリケーションと「ゲームボーイMicro」の「十字カーソルキー」や「A」「B」2個の選択ボタンで、実現している秀逸なユーザーインタフェースだろう。アルバムのタイトル選択から、楽曲の選択、次曲の選択、曲飛ばし、逆戻り、またSELECTキー等を利用することで「低音ブースト」などの高機能の調整も実現している。
エレガントでスムースだがどこかファジーなiPodのスクロール・ホイールに慣らされた指先には、「ゲームボーイMicro」のカチカチと決まる十字カーソルの信じられないほどタイトなコントロール感は時代を超えて心地よいと感じてしまう。オペレーションがアプリケーションと一体となってナチュラルだと、人は両手を必要とするか、片手で出来るかは余り気にならないことが分かるだろう。両手のオペレーションより片手で出来るオペレーションが優秀であるということは必ずしも無いのである。
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