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ブログにおける情報の重さ小寺信良(2/3 ページ)

» 2006年03月06日 10時30分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 一方で本コラムのように、執筆者とは別に編集責任者がいて、掲載前に目を通すというプロセスの有無では信頼性が計れない、という意見も一理ある。今の読者の多くはご存じないかもしれないが、筆者は3年前にこのコラムで、マスメディアだと思うなら疑ってかかれと書いたことがある。これは多数の製造プロセスを経て送り出されるマスコミの情報であっても、本人達が気付かないうちに方向性が変質している事実を示したものである。

 こういうことも起こるのであるが、だからといって多くの人の目に触れる前に誰かがチェックするということは、無意味ではない。例え結果的に書いたものがそのまま載ったとしても、公正さやモラルも含め社会に出す足る品質か、ということのチェックを省略するわけにはいかない。それはある意味、会社組織における稟議書を回覧するのと同じで、責任の所在を組織全体に移行する行為であるとも言える。

 そう考えると+D Blogのように、ニュースメディア内にブログを抱えるという構造に関しては、解釈が難しい。筆者としても、このブログをどう定義付けて行けばいいのか、未だに手探りである。また編集部としても、それがどういう意味なのかよく見えないままに出発した感はある。

 ここでやはり、今までみんななんとなく結論を先延ばししてきた感のある、日本におけるブログとは何なのか、を考えなければならない時期にさしかかっているのではないかという気もする。

ブログとは何か

 ブログというのは、仕組みというかシステムというところから入っていくと、それまでは自分でページをデザインするためにタグを書いたり、書き込みの日付を入れるなど管理・運用が面倒だった「ホームページ」なるものを、テンプレートに則って誰でも簡単に実現できるツールであるということでいいか。

 これまで自分のサイトに掲示板機能を付けるには、そういうサービスを提供するサイトと契約するなどして、場所と機能を借りる必要があった。だがブログではそういったものまですべてパッケージにしてしまった。

 その結果として出現するものは、一つの完成された「ホームページ」だ。ある意味、日本における一般的な意味での「ホームページ」は、ブログという仕組みにとって変わられた感がある。

 ただ従来のホームページと異なるのは、トラックバックという仕組みだ。特定の日記などのエントリーに対して、自分のページ内で言及していることを相手に知らせることができる。

 発信した情報に対してコメント(掲示板機能)が付けられたり、トラックバックがあるということで、ブログはある種のコミュニケーションツールであるという側面も、登場初期には重視された。しかし現実はコメント欄が掲示板のごとく「炎上」したり、スパム投稿のターゲットになったりして、コメント機能はブログにおける墓穴となりつつある。

 トラックバックにしても、双方のブログでなんらかのコミュニケーションが生まれる場合もあるが、そうなると情報の発信なんだか公開メール合戦なのかわからなくなり、一般の読み手が置いてけぼりになる。また、実際にコミュニケーションを行なうべきかどうかすらも、MUSTではない。

 +D Blogの場合、それが一ホームページとして単独で存在するのではなく、ニュースサイト内に存在すると言う点で、ブログという定義からは外れるものだ。また筆者の場合は、コメント欄も閉じて、トラックバックにもいちいち反応しないので、コミュニケーション的な性格を排除しているという意味でも、ブログとは言えず、記事的な傾向が強い。ただ、ブログという更新システムを使い、ブログと名乗っていることで、ブログということになっている。

 実はこうやって各要素を定義付けながら、頭の片隅では総務省がやろうとしている「日本ブログ協会」が一体何をやりたいのかを想像しようとしているのである。活動内容を斜め読みして思うのは、どうもブログをビジネスツールとして使えないかと考えているような気もする。

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