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タイムシフト視聴は民放にもメリットがある西正(1/2 ページ)

» 2006年03月10日 11時55分 公開
[西正,ITmedia]

映画とテレビの連ドラの違い

 映画とテレビの連ドラに共通点があるとすれば、事前の告知、宣伝が非常に重要であるということだ。ただし、放映開始以降の事情は大いに異なる。

 連ドラでは初回視聴率が25%を超えたといったことが話題になる。テレビ以外の娯楽がこれだけ多様化してきている中で、25%という数字は大変なものだ。テレビならではの数字であり、ネット経由の動画サービスでも、それだけの数字で同時視聴がなされたらインフラ的に対応できないと思われる。

 初回視聴率が高い数字を記録することは不思議な気持ちにもなる。映画でもドラマでも、見てみないことには楽しめるかどうかは判断できないはずだからである。連ドラの初回については、楽しめるに違いないと思った人がそれだけの数に及んだことになる。

 テレビ局にとって、番宣がいかに重要かということが窺い知れる。事前の番宣の段階で、ストーリーや配役を見て関心を持ってくれる視聴者をどれだけ確保できるかが、初回の高視聴率のポイントになる。

 初回が始まってしまえば、後は中身次第ということになり、そこからは口コミの影響が大きくなる。初回を見て評判倒れだと感じた人は、2回目以降は見なくなってしまうだろう。問題は評判通りだった場合である。その点についての議論の前に、映画との違いを再確認しておこう。

 映画の場合にも事前の宣伝は重要である。最近は製作本数も増えてきたためか、人気のない映画は早めに打ち切られてしまうことが多い。ただ、どんなに人気がなさそうに見えても、それなりの期間は上映を続ける。

 テレビの連ドラとの最大の違いは、映画は毎日何度も同じ物を上映しているということである。前評判も重要だが、実際に作品を見て楽しんだ人たちからの評判が、口コミで広がっていく効果は大きい。ハリウッドの超大作であっても、興行成績が芳しくないことはよくある。逆に上映が始まってから評判になる作品も多い。実際に見た人の評価は、映画会社にとってはコストがかからずに効果の大きな宣伝となる。

 テレビの連ドラの場合には、ストーリー展開にもよるが、初回の評判がよかったからと聞いて2回目から見ても楽しめるとは限らない。3回目以降、回を重ねるごとに、途中から見たのでは楽しめなくなる可能性は大きい。映画ならば評判が評判を呼びやすいのだが、テレビの連ドラはそうは行かない。

 そこで、テレビ局としては立ち上がりが好評であったドラマについては、3回目、4回目に至るまでの早い段階で、初回、第2回くらいまでの再放送を行う。再放送と聞くと、過去の作品についてのことのように思われがちだが、進行中のドラマについての再放送は珍しくなくなってきている。せっかくの立ち上げ時の好評振りを逃さず、口コミ効果を生かして途中からでも視聴しやすくするためである。

 ただし、問題は再放送の時間帯である。いくらゴールデンで高視聴率をマークしている連ドラの立ち上がりを見逃した人向けのサービスであっても、再放送である以上、昼の時間帯に放送せざるを得ない。ゴールデンと昼帯とでは、広告料も相当な違いがある。それだけ視聴率も取りにくいということではあるのだが、それでも再放送するだけの意義があると考えられている。

タイムシフトの生かし方

 ゴールデンで高視聴率をマークするドラマは、元々その時間帯にテレビを視聴する人向けに作られている。昼間帯にテレビの前にいられる人は少ないはずだ。

 そう考えると、昼間帯に放送された物を録画しておいて、テレビが見られる時間帯に再生して視聴する人が多いであろうことは容易に想像がつく。広告放送である民放としては、昼間帯の再放送であってもスポンサーが付いているわけだから、間違えてもタイムシフトされることを前提に放送しているなどとは言えない。タイムシフトであってもCMを飛ばさずに見る人は思いのほか多いのだが、それでも昼帯の再放送に付いてくれるスポンサーに対しては、リアルタイム視聴を前提として話をせざるを得ない。

 しかし、建前と本音の違いは別としても、サーバ型放送のコンセプトとは、そもそも初回の放送を見逃してしまった人でも後から視聴できるようにするものである。HDDが普及しているとは言え、録画・蓄積を行っていない番組も多い。「見逃した」という表現が当てはまるくらいだから、録画・蓄積をしておかなかった人のことを指していると考えられる。

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