次世代光ディスク――。次世代と呼ばれつつ、すでに数年が経過しているHD DVDとBlu-ray Discだが、本格普及の第1歩となる対応製品がいよいよ本日の午後3時〜4時のタイミングで一部店頭に並んだ。そう、既報の通り東芝のHD DVDプレーヤー「HD-XA1」だ。
いや、最初の次世代光ディスク対応機は、もちろん2003年のソニーBDZ-S77であり、その後も松下電器、シャープから発売。海外ではサムスンやLG電子もBlu-rayレコーダーを発売してきた。しかし”商用パッケージソフト”の再生をサポートした製品は、今回のHD-XA1が初の製品となる。HD-XA1は、実勢価格で11万円前後となる見込みで、4月27日までの出荷分には「バイオハザード」「ムーンライト・ジェリーフィッシュ」の2つの映画タイトルがバンドルされる。市販第1弾となるHD DVDソフトも、4月7日に発売となる。
3月中旬に発表されたHD DVDソフト発売延期のニュースを受け、HD DVDプレーヤーの開発が遅れているのでは? と邪推する向きもあっただろう。筆者のメーラーにも似たようなメールがいくつも舞い込んできた。
しかしHD DVDプレーヤーは、昨年末の段階でかなり完成に近い状態になっていた。著作権保護技術のAACSのライセンスが開始されず、結局は延期になってしまったものの、これだけの短期間でよくぞと思えるほど、すさまじい開発速度で発売に向けて猛進していたのである。
結局、昨年末の段階ではAACS以外で未完成だったのはiHDランタイムモジュールのごく一部や、ブロードコム製MPEGデコーダの一部機能(VC-1デコーダの互換性が不完全と言われていた)などで、東芝自身の開発部分はほとんど製品に近いレベルにまで仕上がっていたという。
結局、HD-XA1は昨年末に間に合わず、1月のCESでは低価格機のHD-A1が発表されるに至った。しかしCeleronプロセッサを搭載した、ほとんどPCがベースと言っても過言ではないHD-XA1はパフォーマンスでは上回る。また、本来の予定日から約4カ月後ろにスリップした事で、製品の完成度を高める時間を得ることができたようだ。それはパッケージソフトについても同じ事がいえる。時間をかけて初期タイトルのオーサリング作業を練り込めた。
そして今日、AACSの対応パッケージソフト向け鍵発行のタイミングからすると、おそらくは最も早いスケジュールで動いた。すでに店頭に製品(HD-XA1)が並んでいる事からも、その周到さがわかるだろう。AACSの正式な鍵で暗号化されたバンドルソフトの完成を待って、即、準備していたハードウェアと組み合わせて出荷したのである。
これほど東芝が急ぐ理由は、先行逃げ切りを狙いたいからだ。次世代光ディスクに収められた新しいHDコンテンツは、非常に高画質だ。コンシューマーユーザーにとって「HDコンテンツ=デジタルハイビジョン放送」というのが現状だが、HD DVDにしろBDにしろ、それをはるかに上回る画質を誇っている。
”DVD”というユーザーにとってわかりやすいブランドを背負い、圧倒的に高い画質と音質をアピールし、HD DVDが高品質なメディアである事を印象づけたいというのが本音だろう。比較競合の対象として対比される可能性があったPlaystation 3の発売延期が正式発表されたことも、HD DVDの日本での先行発売を後押しした。
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