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“CMのCM”のCMコラム(2/2 ページ)

» 2006年04月19日 16時03分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 ただ、ゴールデンタイムのバラエティ番組に多いが、CMの前後で全く同じ映像を繰り返すのはいかがなものか。CM後に視聴者の興味を引きたい気持ちは理解できるが、あまり長いと逆効果だ。そういう番組を見ると、CMを含めて一気に数分間スキップしたくなるし、リアルタイムで視聴している場合は「次回は録画しよう」と思う。そう感じるのは私だけではないはずだ。

 事実、最近のDVDレコーダーの中には、CM前後の映像を解析し、視聴時に重複部分をうまく飛ばせるようにチャプターを打つ機能を搭載したものがある。そして、新しい機能はニーズから生まれるものだ。単に悪者扱いするのではなく、背景にも目を凝らしてみるべきだろう。


 話を元に戻そう。第一印象はイマイチだったコマーさる君だが、最近では女の子を慰めたり、日本各地の名所をめぐったりして、なんとなく好感度アップだ。2月からは「シリーズ4」として新たに4本のCMを放送開始。鹿苑寺金閣やクラーク像の前で、コスプレしたコマーさる君が日本の伝統にCMをこじつける。無理があって笑いを誘うタイプのコマーシャルだろう。

 日本民間放送連盟のキャンペーンサイトでは、この新シリーズも含め、これまでに放送されたキャンペーンCMをすべて公開している。また、TVCM開始から現在に至る時代背景とともに、代表的なCMを「CMライブラリー」で紹介していたりして、意外に楽しめる。

 CMライブラリーでは、10年ごとに時代を区切り、当時の時事ニュースやヒット商品、流行語などを参照しながら、10本程度のCM動画を再生できる。ちなみに1960年代の代表は「文明堂のカステラ」とサントリー「トリスウイスキー」。「アンクルトリス」は、最近復活して話題になったが、ここではモノクロの貴重な映像を見ることができた。

 1970年代は小学館「ピッカピカの一年生」。この子たちも、そろそろ30歳代後半から40歳代になっていて、小学生くらいの子どもがいてもおかしくない頃だ。そして1980年代はマルマンの禁煙パイポ。真面目そうなサラリーマンが「私はこれで会社を辞めました」と小指を立てるシーンは、当時ピッカピカの小学生だった筆者にもすごく印象的だった。

 こうして改めて見てみると、テレビCMは確かに時代を映す鏡であると同時に、時代を作りだしてきたということが良くわかる。テレビCMのキャッチフレーズが、その年の流行語になった例も多く、ときには全国的なブームを起こす。

 最近の例でいえば、愛らしいチワワで一世を風靡した、あのCMだろうか。日本中にチワワブームをまき起こし、共演した俳優さんは仕事が増えて家を建てたとか(巷では“チワワ御殿”と呼ばれているらしい)。10年後には、この時代を象徴するCMとして「CMライブラリー」に仲間入りするかもしれない。

 もっとも、チワワの会社はその後の行政処分によって自ら「どうする?」状態となり、テレビCMなどの広告活動も2カ月間は自粛することを決めた。深夜に多く見られた消費者金融のCMは、他社も含めてしばらくの間、減ることになるかもしれない。どうする? コマーさる君。どうしようもないか。

 そんな顛末も含め、テレビCMは世の中の動きを反映し続けていく。皆でエンジョイしよう。

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