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「プラットフォームはできた。次はロボットの“遊び方”だ」――スピーシーズインタビュー:人型ロボット「ITR」(2/2 ページ)

» 2006年04月22日 04時49分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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――19万円という価格は、少々敷居が高いと感じます。販売目標は3000台ということですが、当初はどのようなユーザー層を想定しているのでしょうか?

 「そうですね。最初は、いわゆる“エッジな人たち”に買ってもらいたいです」

――イベント計画にある「新キャラグランプリ」「萌えワングランプリ」というのは、その販売戦略の一環ですか?

 「そうです。検討しているのは、ITRの(外装を)“着せ替え”たり、スタイルを変えることです。キャラクターやタレントさんの形にしてもいいでしょうし、アニメに登場するロボットにするのもアリです。そのロボットが声優さんやタレントさんの声で話し始めたら、好きな人達はハマってくれるのではないでしょうか」

 「もちろん、ロボットやアニメには限りません。さまざまなジャンルで、ちょっとマニアな人たちが“面白い”と感じるネタはたくさんあるはずです。その意味で、まずはキャラクターを持っている企業とお話ししたいですね。あと、われわれが『萌えワングランプリ』を主催するのはちょっとアレですから、代わりに主催してくれる方も募集中です」

――なんだか、3000台くらいはすぐに売れそうな気がしてきました(笑)。しかし、目標である一般家庭には、まだ距離があるように感じます。中期計画では、2008年に“次世代機”も予定されていますが、ITRはどのように進化していくのですか?

 「一般の家庭にロボットが入るためには、やはり10万円とか、5万円といった価格レンジにしなければならないでしょう。しかし、コストダウンのためには市場規模が必要で、市場を作るには“遊び方”が必要です。今回の発表で、番組をダウンロードしてロボットにいろいろなことをさせるための基本技術ができました。次は、この仕組みを利用して“遊び”をどんどん作っていく段階です。それが面白ければ、市場が形成され、ロボットのコストも下がっていきます」

 「次世代機に関しては、もう少しCPU性能(現在はSH3/133MHz)を上げ、今はアダプタをUSB接続している無線LANの搭載方法なども見直すつもりです。いずれはロボットにテキストの読み上げ機能を付け、エンドユーザー同士がロボットでメッセージをやりとりできるようにしたいですね。携帯メールに絵文字や顔文字をつける人は多いですが、ロボットでメールをやり取りすると、絵文字に込められた感情を“ロボットの動き”で表現できます。いわば“リアルな絵文字”です」

 「読み上げ機能というと『処理が重い』と思われがちですが、ロボットに高性能のCPUを搭載しなくても、サーバ側で音声ファイルに変換してからダウンロードするという方法があります。ITRは、基本的に『できること』はサーバ側で処理し、ロボットは“プレーヤー”という位置付けですから、いたずらに機能を増やすことはありません」

 「それから、今回のITRが売れることが前提になりますが、将来的にはロボット自体を小さくしたいと考えています」

――今よりも小さくできるのですか?

 「目標は、高さ10センチです。とくに技術的な根拠や見通しがあるわけではないのですが、小さくなればロボットを鞄に入れて外出することができ、用途も広がるでしょう。近い将来、喫茶店のテーブルの上でロボットが踊っていたりするかもしれません」

 「もちろん現在の部材――たとえば今のサーボの大きさでは無理です。しかし、ロボットをどんどん開発して、小さなサーボが必要ということになれば、メーカーは作ってくれるでしょう。実際、技術的にできないことはほとんどなくて、最終的には『何個売れるの?』という話に帰結します。そのためにも、まずはITRで市場を開拓しなければなりませんね」


 ロボットという夢のある商品を作りつつ、コストやビジネス性という点で極めてシビアに取り組むスピーシーズ。同社の提供するプラットフォームビジネスが軌道に乗るまでには、まだいくつかのハードルを越えなければならないが、特定のユーザー層を超え、ロボットをコモディティ化させるためには欠かせない取り組みといえそうだ。

 ところで、春日社長の話を(エッジな部分だけ)総合すると、「近い将来、身長10センチの萌えキャラロボットが机の上を歩き回り、アニメ声でメールを読み上げたり、踊ったりする」ことになりそうだ。漫画「ちょぴっツ」のノートパソコンを彷彿とさせる未来図は、ロボットビジネスの新たな可能性を示唆している、のかもしれない。

photo スピーシーズ社内の1コマ。同社がこれまで手がけてきたロボットたちとAIBOが仲良く並んでいる
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