――「映像」というキーワードが出てきましたが
小寺氏: 映像を持ち出すという楽しみ方が発芽しつつあることは感じます。ですが、映像は「デジタル放送の本格開始」という大きな変革がありました。デジタル放送はコピーワンスというDRMが既に施されているので、現在モバイル機器で楽しまれている映像はアナログ放送の録画か、iTunes Music Storeなどで販売された、放送とは別系統の権利処理が施された映像ですよね。
音楽、とくにメジャーな音楽は出所がハッキリしていますが、映像は出所がハッキリしていないものが結構流通してしまっているんです。YouTubeなんかを見ると分かりますけれど、“YouTubeにある”というは分かるけれど、“誰のものなのか”は分からない映像がゴロゴロしてる。
津田氏: Google VideoやYouTubeのような動画SNSとも言うべきサイトが出現したことも2年前とは大きく違うところです。昔からファイル交換ソフトなどで動画のやりとりは行われて来ましたが、検索性が悪くて、実際にダウンロードして確認しないと求めているものか分からなかったですよね。
YouTubeならば、URLで紹介しあってパッと見て、つまらなかったらブラウザのウィンドウを閉じてしまえばいい。非常にイージーです。著作権的にそのコンテンツはどうなのかという問題も多分に含まれていますが、それらの動画サイトが映像の新しい楽しみ方を提案したことは間違いないですね。
DVD/HDDレコーダーの普及もあって「デジタルで映像や音楽を楽しむ=オンデマンドで楽しむ」は当たり前になりましたし、もはやライフスタイルの一部と言ってもいいでしょう。時間に縛られないでコンテンツを消費したいという欲求は昔からあったと思いますが、技術の進歩がそれを可能にしましたね。
ただ、いまだにコンテンツは「放送時間」という制約にとらわれて作られているし、少なくとも法整備は進んでいません。首をかしげざるを得ない部分ですね。もっとも、これも「結論ありき」で進められている部分なのかも知れませんけれど。
小寺氏: 法律というは常に現状から遅れるものですから、それは仕方ないところでしょう。アメリカではフェアユース(公正利用)という考え方が適用されますが、それは法に対する考え方が違うからですね。大枠を決めて詳細は裁判で決めましょうという進め方が定着していますし、処理速度も早い。日本は法律に照らし合わせないと新たなサービスを開始できません。
Google VideoやYouTubeといったサービスが日本でOKかといえば、とてもそうとは言えない状況です。なぜかと言えば、アメリカの著作権法が遅れているからなんですよ。遅れているというか、法律自体がマネーゲームの側面を持っていて、お金持ちの映画会社に有利なように法律が制定運用されているのがアメリカの現実です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR