私的録音録画補償金の見直しや再検討が始まったデジタル放送のコピーワンス、YouTubeやGoogle Videoなどへの著作物違法アップロードなど、「著作権」をめぐる課題は技術が進歩しても収まることなく、むしろ複雑さを増している。
「私的録音はどこへ行くのか」というテーマから著作権全般に関する諸問題まで議論してもらった前回の対談から2年。コラムでおなじみの“映像の小寺信良氏”と音楽配信メモの“音楽の津田大介氏”の2人に再びデジタル時代の著作権がいま、どうなっているのかを語ってもらった。
――前回の対談から2年近くがたちましたが(前回の対談は2004年9月に行われた)、それから「著作権」を取り巻く環境はどのように変化したと感じますか?
小寺氏: 2004年9月といえば、私的録音録画補償金の問題についてはまだ法制問題小委員会で議論している最中でしたね。その後も議論が重ねられ、「2007年をめどに制度の廃止を含めて見直す」というところまでこぎ着けたのは、ひとつの成果だと思います。
その後、議論の場を津田さんも委員として参加している私的録音録画小委員会に移した訳ですが、権利者にあたる人や賛成派といわれる人が委員の大半を占めています。人選は問題があると思いますね。
こうした小委員会というものはまず結論ありきで、議論はアリバイ固めみたいなところがあるんですよ。前の小委員会(法制問題小委員会)には漫画家の先生(里中満智子氏)や消費者団体の方(全国地域婦人団体連絡協議会事務局長の加藤さゆり氏)がいたんですけど……。
もれ聞こえたところによると、委員会を開く日付は補償金に反対のスタンスを取る人がダメな日に決まるらしいですよ。議論が行われるようになったのは進歩ですが、水面下でこうしたことが起こっているなら問題です。津田さんも今後、活躍していけばそんな目にあいますよ(笑)
――津田さんが2年前と最も違うところと言えば、文化庁の委員(私的録音録画小委員会の委員)になられたことですが、津田さんはここ2年で著作権を取り巻く環境がどのように変化したと思われますか?
津田氏: まず社会的な状況の変化から言うと、iPodとiTunes Music Storeが完全に認知されたことが大きいですね。以前から売れてはいましたが、あくまで携帯オーディオプレーヤーの1つとしてしか認識されていなかったのが、いまは携帯プレーヤーの代名詞となりました。CDからPCへ音楽を取り込んで活用するのが一般化したのは大きな変化ですね。
あとは「モバイル動画」の立ち上がりです。iPodの動画対応もそうですし、動画の再生可能なゲーム機、PSPやニンテンドーDSも登場しました。2年前、PCやレコーダーで録画した映像をモバイル機器に転送して楽しんでいたのは超が付くマニア層だけでしたが、環境が整備されたことから、カジュアルな行為になりつつあるよう感じます。
電車内で動画を楽しんでいる人を見かけるのも、さほど珍しいことではなくなりました。これまでは音楽を持ち出す「録音」しか問題にならなかったのが、これからは映像を持ち出す「録画」も大きな問題になるでしょう。議論を深めて行かなくてはならないところですね。
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