地上デジタル放送と薄型大画面テレビの普及により、ぐっと身近になったハイビジョン放送。高精細な映像は、一度慣れるとスタンダード画質には戻れないと言われる。しかし、地上波やBSがハイビジョン放送を前提にしているのに対し、スカパー!やCATVの専門チャンネルはハイビジョン化があまり進んでいない。先週、国際展示場で開催された「ケーブルテレビ2006」の会場で、その理由を探った。
まず、現時点でハイビジョン化している、あるいはハイビジョン化が決定しているCS系の専門チャンネルを整理してみよう。
チャンネル名 | 提供時期 | 番組供給事業者 | プラットフォーム |
---|---|---|---|
STAR CHANNEL HV | 放送中 | スター・チャンネル | デジタルCATV、スカパー!110 |
FOXlife HD | 放送中 | ニューズ・ブロードキャスティング・ジャパン | デジタルCATV(J:COM) |
Discovery HD | 放送中 | ジュピターTV | デジタルCATV(J:COM) |
スカチャン! HV | 放送中 | スカパー! | スカパー!110 |
Movie Plus HD | 2006年8月1日 | ジュピターTV | デジタルCATV(J:COM) |
J SPORTS HD | 2007年4月予定 | ジュピターTV | 未定 |
GOLF NETWORK HD | 2007年4月予定 | ジュピターTV | 未定 |
LaLa TV HD | 2007年4月予定 | ジュピターTV | 未定 |
このうち、直近で開始されるのは、映画専門チャンネルの「Movie Plus HD」だ。ジュピターTVによると、「Discovery HD」や「FOXlife HD」が従来のSD放送とは別編成(新チャンネル)として提供されているのに対し、Movie Plus HDは既存の放送を置き換える形で提供するという。「まずはゴールデンタイムなど3割程度をハイビジョン化し、徐々に時間帯を増やしていく」。
ただし、Movie PlusをHDで楽しめるのは、当面の間は一部CATVユーザーだけだ。理由はDiscovery HDなどと同じで、JDS(日本デジタル配信)が運営するHOG(Headend On the Ground)方式のネットワークで供給されるため。HOGは、その名の通り“地上”のコンテンツ伝送路。従来のHITS(Headend in the Sky)がCSを中継路に使用するのに対し、HOGは地上の光ファイバーでコンテンツ供給会社とCATV局を結ぶ。もともとは天候に受信状況が左右されやすい衛星インフラに対する“降雨対策”を目的に作られたものだが、CSのトランスポンダより帯域に余裕があり、コストも安いためハイビジョン化が進めやすい。
そして、CATVの中でもハイビジョン化に積極的なのが、大手MSOのJ-COMだ。同社は現在、「STAR CHANNEL HV」「Discovery HD」「FOXlife HD」という3つのハイビジョン専門チャンネルをラインアップしているが、「Movie Plus HD」の導入も表明済みで「秋を目指して準備を進めている」(J:COM)としている。
同社の場合、東京、大阪、福岡など全系列局を結ぶ光ファイバー網を昨年末に自前で構築し、これをHOGに接続してハイビジョン放送を流している。「光伝送のメリットは、競合のCS放送(スカパー!)にないコンテンツを伝送できること」。ハイビジョンに注目が集まっている現在、チャンネル数ではスカパー!に及ばなくても、“量より質”を訴求する絶好のタイミングといえるのかもしれない。
また、ほかのケーブルテレビ局もハイビジョン放送の拡充に動いている。たとえば東京・神奈川にサービスエリアを持つイッツ・コミュニケーションズは、専門チャンネルではないが、今年7月からテレビ埼玉の再送信を始めた。「ハイビジョン化を推進する上では、エンドツーエンドの放送サービスを提供できるCATVが優位だ。今後は専門チャンネルのHD化も検討していく」(イッツコム)。大阪のケーブルウエストや東海地方に地盤を持つトーカイグループなどもJDSとの接続を開始しており、「今後、ハイビジョン放送、双方向サービスなどさまざまなデジタル新規サービスを展開する予定だ」(ケーブルウエスト)。
しかし、「ケーブルテレビ2006」の会場を歩いていると、サプライヤー(番組を供給する側)の対応はまちまちであることに気づく。積極的に“ハイビジョン”を謳ったのは、「Movie Plus HD」のほか新たに3チャンネルをハイビジョン化すると明らかにしているジュピターTVブース程度で、ほかのサプライヤーはむしろ、高画質化よりもチャンネルの増加に力を注いでいる様子だ。
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