既存DVDメディアにAVC/H.264を使ってHD(High Definition)映像を記録するというAVCHD規格のビデオカメラが、いよいよ市場にお目見えする。だがまったく新しいフォーマットであるがゆえに、いろいろと謎が多いのもまた事実である。
そもそもDVD Video規格には、HDサイズの映像を記録することは定義されていない。それゆえにHD映像を記録できるリムーバブルメディアとして、次世代DVDと言われるBlu-rayやHD DVDが存在するわけである。
ただDVDメディアにHD映像を記録するという試みは、これが初めてではない。次世代DVDの動きが高まった2003年には、中国が独自規格として「EVD(enhanced versatile disc)」を立ち上げ、実際にプレーヤーなどの製品も出荷している。
また翌年にはEVDの対抗として「HDV」(ビデオカメラの規格ではない)、「HVD」といった規格が立ち上がっている。HVDは2004年末にHDVへ統一されたようだが、EVDもHDVもその後の状況はあまり詳しく伝わっていない。
一方日本でも、ソニーのバイオに付属のソフトウェア「Click to DVD Ver2.3」以降で、HDVカメラの映像保存方法として独自フォーマット「HDディスク」を搭載した。だがこれはデータ保存の傾向が強く、PCでしか再生できない。
HDVカメラの登場以降、HD映像を個人で撮影することが可能になった。だが編集したHDコンテンツの保存方法がないというのが問題であったわけだ。AVCHDはHDVと同じように、ビデオカメラの規格である。だがDVDメディアにHD映像の記録ができるというソリューションは、HD映像保存のジレンマを解決できるのではないかと期待する方も多いのではないだろうか。
AVCHDフォーマットとはどのような技術なのか、ソニー デジタルイメージング事業本部 パーソナルビデオ事業部 設計2部統括部長の吉川孝雄氏にお話を伺った。
まずはAVCHDの生い立ちからお話を伺っていこう。AVCを使ったビデオカメラの構想は、いつ頃からスタートしたのだろうか。
「AVCコーデックに関してはMPEG-2の進化ということで、2003年頃からベースのところの研究は続けて来ました。実際に製品として行けると思い始めたのは、2004年ぐらいからです。われわれとしてもリアルタイムのエンコーダとして使えるかどうか、かつモバイル機器ですので消費電力の見通しとかというのは、かなりのシミュレーションを重ねてきました。新しいフォーマットとして適用しようと考えたのは、1年ほど前からですね。」(吉川氏)
AVCHDは、ソニーと松下が共同で策定した規格である。規格策定のすり合わせも同じく1年前からスタートしたそうだが、当然松下でもAVCを使ったビデオカメラの構想はそれ以前から持っていたはずだ。今年5月のAVCHD発表以前に、4月に米国で開かれた放送機器展示会「NAB2006」で、同社のプロ用カメラシステム「P2」がAVCを採用することを発表している。
P2で採用するAVCは編集時の便宜を図るということで、フレーム間圧縮を行なわずIフレームのみの構成となる。一方、AVCHDで採用しているAVCは、フレーム間圧縮も行なう一般的な方法を採用している。AVCもMPEG-2と同じく、用途に応じて細かく使い分けが出来るよう、プロファイルとレベルによって分けられている。
「当社のAVCHDカメラでは、メインプロファイル、レベル4.0を採用していますが、フォーマットとしてはハイプロファイルまでサポートしています。と言うのも、最終的にはBlu-rayですべての互換性を持たせようというのが、この規格の柱なんです。ですからBlu-rayで採用していないものをこれで採用するというのは、考えていませんでした。今後は機器によって、使用するプロファイルはメインのものもあるだろうし、ハイのものもある可能性はあるだろうと思います。」
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