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CEATECで見つけた4つの次世代トレンド麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

» 2006年10月20日 11時49分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――確かに55インチSEDの実際の映像を見ると、これまでのテレビとはまったく別物に感じました。

麻倉氏: 画質的な飛躍がすごかったですね。ポイントは3つあります。1つは「“精細感”が非常に高い」ということです。フルHDだから精細感が高いという単純なことではなくて、1つの画素の持つ画質的なエネルギーがどのくらいあるか、というのが精細感の重要な要素ですね。精細感が高いということは、ハッキリクッキリしていればいいということではなくて、我々があたかも自分の目で本物を見ているかのようなナチュラルな精細感が、今回のSEDにはありました。他のディスプレイデバイスでは往々にして尖鋭感をメインに出して輪郭で作っていくようなものでしたが、SEDの場合は「ディテールが自ら欲するようなカタチで自然に出てくる」というナチュラルな精細感なのが印象的でした。

 2つ目は「なめらかでなだらかな色の階調感」です。スムーズで緻密、しかも情報量が非常に多いですね。SEDブースでのデモンストレーション映像の中では、女性の頬の移ろいが非常に自然でなおかつ適切な暗部のシャドウ感があり、なおかつハイライトの浮き上がり感があるといった感じ。2次元の映像なのですが、微細な奥行き感があるのです。これは液晶でもプラズマでも得られることができない映像感ですね。

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麻倉氏: 3つ目はダイナミックレンジが広い点です。自己発光ならではの黒の漆黒的な沈みと白のピーク感の伸びの対比が素晴らしい。デモ映像では暗い港のシーンがあるのですが、港の灯りがない部分はすごく黒が沈んでいるのですが、ライトがあるところはすごくピークが立っていて、目で見たリッチ感/リアリティ感が非常に感じられるのです。さらに港の背景には実は山と雲があるのですが、そこのほんの1つの階調の違いが表現できているのです。ここまでのディスプレイの凄い表現力は初めて見るものです。

 これからのリッチコンテンツの時代には、コンテンツの信号の中にメッセージ性が多く含まれ、元のコンテンツのテクスチャが含まれるわけですから、それを正しく表現してあげるということが極めて重要となってきます。そのためには、非常に基本的なことなのですが、暗い部分はきちんと暗くしなければいけない。そのためには自己発光が一番ふさわしいんだということを私は以前から訴えてきたわけですが、ここまでの感動的な表現が自己発光デバイスで可能だということは、実際にこの目で見るまで信じられませんでした。来年の登場が非常に楽しみですね。

――新聞など一部報道では「液晶/プラズマが安くなっている中でSEDは生き残れるか」といった論調もあるようですが。

麻倉氏: これは実際にSEDの映像を自分の目で見れば分かると思うのですが、SEDはこれまでのテレビとは別次元のものなのです。白黒テレビからカラーテレビに変わったぐらいの歴史的なターニングポインといえるでしょう。液晶やプラズマと競合するものではなく、それらの頂点に立つ画質の王者として君臨するディスプレイなのです。

 「では、SEDはいつまでも高価で大衆化しないものなのか」という声もありますが、それは液晶やプラズマといったデバイス開発の歴史を知らない人の意見ですね。液晶やプラズマは、今でこそ普及価格となってますが、そこに至るまでに液晶は液晶150年、プラズマは40年もかかっているのです。SEDは1980年代後半にキヤノンが研究開発を開始してから、まだ20年しか経っていません。これだけの開発期間で商品化にこぎつけたのですから、むしろ画期的なスピードなのです。

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