パナソニックマーケティング本部は11月13日、家庭内の電力線をLAN回線として利用し、最大180Mbpsという高速なデータ通信を可能にする「HD PLC」方式のアダプタキット「BL-PA100KT」を12月9日より販売開始すると発表した。価格はオープンで、実売想定価格は2万円前後。増設用アダプタ「BL-PA100」も同時に用意する。こちらの実売想定価格は1万3000円前後。
「HD PLC」はPLC(Power Line Communication:電力線搬送)の技術を使用した同社の提案する規格。年頭に北米で行われたInternational CESでは既に同種製品(BL-PA100A)の発表及び、北米一域での販売開始をアナウンスしている(関連記事)。
PLCの技術そのものは既に存在しており、これまでの電波法下でも10kHz〜450kHzの周波数帯を利用して最大数Mbpsでの通信が行えた。しかし、ブロードバンド環境を考えるとパフォーマンス不足の感は否めない。そこで、より高い周波数帯を利用することで、HD PLCのように200Mbps(理論値)クラスの高速なデータ転送が可能とする技術が開発されたが。日本では製品化が行われていなかった。
その最大の理由は、高速伝送下のPLCで利用される高周波が機器やケーブルから漏洩し、電波障害の原因となりかねないことであった。しかし、10月4日付の官報(号外 第227号)で具体的な漏洩許容量が告知されたことから、製品化のめどが立った。
BL-PA100KTで利用される周波数帯は4〜28MHz。最大通信速度は190Mbps(PHY)、実行通信速度は最大80Mbps(UDP)/55Mbps(TCP)。通信距離は最大150メートル。変調方式には周波数帯ごとに細かく信号をカットする「Wavelet OFDM」方式を開発し、採用することで、短波放送などへの影響を最低限に抑制したという。「既存インフラとの共存は優先課題と認識している」(パナソニック コミュニケーションズ ホームネットワークカンパニー ホームセーフティカテゴリー カテゴリーオーナー 小林英次氏)
家庭への導入時は1台をブロードバンドルーターに接続して「マスター」(親機)とし、ほかのアダプタを「ターミナル」(子機)として組み合わせる。ターミナルにパソコンやゲーム機、HDDレコーダーなどを接続すれば、接続された機器からインターネットが利用できる。ターミナルは最大15台まで増設可能。AES 128bitの暗号技術を標準で実装しており、配電盤などを通じた近隣住宅へのデータ漏洩に対応する。
同社では「配線が面倒」「セキュリティや無線電波の利用版が狭い」といった不満を有線/無線LANに対して持つ一般ユーザーに向け、まずはPCでの利用を訴求していく。本製品のようなアダプタの形態はもちろん、コアとなるチップ/モジュール形態の提供開始していく予定であり、2010年には1000万台規模の市場形成を目指す。
「ネットワークにつなぐ可能性のあるものすべてにHD PLCのモジュールを搭載していきたい。オフィスだけでも、FAXや電話、インターフォンなどさまざまなものに入り込めるだろうし、将来的には電化製品全般がターゲットなる。」(松下電器産業 役員 パナソニック コミュニケーションズ 代表取締役 藤吉一義氏)
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