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れこめんどDVD:「M:i:III(HD DVD)」DVDレビュー(2/4 ページ)

» 2006年11月24日 00時24分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

ここからクオリティチェック、スタート

 余談が長くなったが、実際のディスク・クオリティのチェックに入ってみよう。視聴はいつもと同じく液晶プロジェクターによる80インチのスクリーン再生と42インチのプラズマで行った。映像再生はHDMI接続だ。

 まず冒頭のシーンでいきなりトム・クルーズ演じるIMFのスパイ、イーサン・ハントが大ピンチに陥る。これはテレビドラマではよくある手法でJ・J・エイブラムス監督は「エイリアス」でもよくこの手の演出をしているので、テレビシリーズを見ている者には思わずニヤリとしてしまうはずだ。

 映像のトーンは全編を通じて、やや増感気味になっていて、劇場で見たときも粒子感が強く感じられたが、HD DVDでもそのトーンはしっかりと再現されている。皮膚の質感が本物以上に生々しく表現され、汗の粒もちゃんと見えることで、イーサンの緊迫感がより強まっていると感じられるはずだ。

 緊張の絶頂でタイトルへ。おなじみ火花を背景にテロップが乗るものだが、今回はテロップに立体感を付けている“シャドー”と呼ばれる箇所に火花の反射が見て取れるなど、細かい部分へのこだわりも確認できた。

 CH-2はイーサンの家でホームパーティーが開かれている様子だが、外の暗闇がよく締まっているのが分かる。メインスタッフのテロップに登場人物の字幕が重なってしまうのが、ちょっと残念だが、字幕もくっきりしていて見やすい。

 イーサンはその後、指令を受けるためコンビニに出かけるが、店の棚を使い、立体的な映像を効果的に生み出している。メッセージを伝えた使い捨てカメラは使用後、煙を出すのだが、その煙の細部も妙に存在感があって、HDの画質であることを実感させる。

コンピューター画面の緻密さ、廃工場の奥行き感もHDならでは

 CH-3ではヴィング・レイムス演じるイーサンの同僚ルーサーが操るコンピューターの画面の緻密さに圧倒される。これらの画作りは日本でも「踊る大捜査線」などで、かなりのこだわりを見せているが、日進月歩なので最新作であればあるほど細かくなっていっているようだ。

 イーサンたちは、ミッションで敵の武器商人デイヴィアンに捕らえられた仲間のエージェント、リンジー救出に向かうのだが、敵のアジトである廃工場の描写も奥行きが感じられる画作りが意図的になされており、HDの高画質がそれらの表現を見事に支えている。

 DVDであれば、奥行きは構図からしか感じられず、平面的な表現に留まってしまうかもしれない。テレビ出身のJ・J・エイブラムス監督のこだわりは劇場映画ならではの広がりを出すことでもあり、シネスコサイズを選択したのもそういう理由からだろう。この場面では激しい銃撃戦や爆破などがふんだんに盛り込まれており、脱出に使うヘリコプターでのチェイスも風車が大量にある風力発電地帯を使ったユニークなものになっている。もちろんサラウンドもフルスロットル! 縦横無尽に各チャンネルから音が響き渡ってくる。

 ヘリのチェイスと同時にリンジーの頭に小型爆弾が仕掛けられていることが分かり、何とかしようとしているイーサンたちの姿も描かれているのが見事だ。J・J・エイブラムス監督は「エイリアス」や「LOST」でも同様の演出を試みて、作品に同時進行性の厚みを持たせているのだが、この「M:i:III」にはその演出法が実にはまっていることは誰が見ても明らかだろう。ここでリンジーは残念なことに命を落とす。余りにも無残な死に顔は「リング2」の深田恭子以上だ。テレビシリーズならば、放映をためらうかもしれないものだが、彼女の死に顔がデイヴィアンの悪党ぶりを強く印象付ける。

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