2006年7月に初のデジタル一眼レフ機「α100」を発売したソニーは、その後αマウントの交換レンズを続々と投入している。中でも注目は、高級レンズの代名詞的存在「カールツァイス」ブランドのレンズだ。
10月末に発売した「Planar T* 85mm F1.4 ZA」と「Sonnar T* 135mm F1.8 ZA」は、どちらも開放F値が明るい中望遠の単焦点カールツァイスレンズ。その開発者に、開発の狙いやカールツァイスの魅力を語ってもらった。話をうかがったのは、商品企画を担当したソニー デジタルイメージング事業本部 AMC事業部 商品企画部 商品企画課 白石明氏と、光学設計を担当した同社 デジタルイメージング事業本部 オプト技術部門 CLグループ シニア オプティカル エンジニア 末吉正史氏、鏡胴設計全体の取りまとめを担当した同社 デジタルイメージング事業本部 オプト技術部門 CLグループ 加藤隆史氏の3人だ。
――開発の経緯は?
加藤氏: 去年7月にコニカミノルタとソニーとでデジタル一眼レフ機を共同開発する発表を行い、そのときから新しいボディおよび新しい交換レンズの開発がスタートしました。交換レンズは、コニカミノルタのレンズをベースにしたものだけでなく、まったく新しいものも作っていく計画でした。ただせっかく新開発するなら、高性能なレンズを目指したい、もともとソニーがHandycamやCyber-shotで使用していた「カールツァイス」のブランドを訴求し、最高品質のレンズを作りたいと思ったのです。
――ドイツのカールツァイス社とは、具体的にどんな関係で開発を進めたのですか?
末吉氏: カールツァイスは光学関係を中心にという基本はありますが、詳しい役割り分担まではお答えできません。
――共同で設計・開発したものを、国内のソニー工場で生産し、出荷の際にもさらにカールツァイスの認証を受けるということでしょうか?
末吉氏: 設計の段階で、近似スペックの他社レンズには負けない光学性能を備えることがカールツァイスレンズの大前提です。例えば、少し性能を落とせば、もう少し小さくできるといった妥協は一切ありません。常に光学性能がナンバーワンでなければなりません。その上で、製造や管理、出荷に対する要求レベルも非常に高いといえます。カールツァイスの指定した測定器によって全数を測定し、厳密な基準に適合したもののみを出荷しています。カールツァイスの検査員によるチェックもあります。他社のことは何ともいえませんが、例えば旧ミノルタ時代のものと比べても出荷の基準には差があります。
――今回の2本のレンズは、従来のミノルタの85ミリや135ミリレンズとは別のレンズということですね。また、これまでに他社が発売したカールツァイスレンズとの関連はあるのですか?
白石氏: まったく新規に設計したもので、旧ミノルタのレンズや、他社が発売したカールツァイスレンズとの関連はありません。レンズの構成やフォーカス方式なども異なります。85ミリF1.4というスペックはミノルタ時代のレンズにもありましたが、それを上回る光学性能や操作感、持つ喜びなどを実現できました。その旧レンズをすでに持っている人にも、買い替えや買い増しをしていただけるレンズといえるかもしれません。
――カールツァイスレンズとは、光学設計つまり画質を最優先にしたレンズと考えていいのでしょうか?
加藤氏: はい。当然ながら画質は最優先ですが、それだけでなく持った触感や操作感などもとても大切です。一般的に外装部材には軽量化のためにプラスチックを使いますが、今回の外装は金属ですし、通常はゴムを用いるフォーカスリングも、触ったときの高級感をかもし出すためあえて金属を採用しています。さらにフードやレンズキャップの素材にもこだわっています。
――そうしたこだわりは、カールツァイスから指示があるのですか?
末吉氏: 様々なケースがあります。カールツァイスから外観など光学以外の面の要求もありますし、逆に当社から提案する場合もあります。
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