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デジタル分野総ナメ――「2006年デジタルトップ10」麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/4 ページ)

» 2006年12月27日 08時56分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――次世代DVDの一翼、Blu-ray Discのパッケージソフト再生と録画に対応した“第2世代製品”ともいえるパナソニックの「DMR-BW200」が5位です。

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麻倉氏: ここにきてパナソニックはオーサリングからアプリケーション、機器製造までBDに全力投球している印象です。Blu-ray Discの規格自体はソニーとフィリップスが中心となって策定したもので、ソニーとしては最初にレコーダーを立ち上げ、その後にパッケージソフトの登場が来るとイメージしていました。最初はRE、つぎはROMという考え方ですね。DVDの時はROMから市場が立ち上がったために混乱を招いたという反省をふまえており、これはある意味正しいのです。

 ですが、パナソニックはREもROMも同時に立ち上げなければならないと考えたのです。DVDは初期化やファイナライズする必要がありますが、Blu-ray Discではその必要がありません。記録したコンテンツは必ずプレーヤーで読めるようにしてあります。これはDVDの反省をふまえたものです。詳細は拙著「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」を読んで頂ければ(笑)。

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 さてDMR-BW200ですが、エアチェックマシンとしては最強のマシンと言えます。VHSからDVDレコーダーへという伝統をふまえながら高い完成度を持っています。「チャプターがない」という管理方法には最初、驚きましたが、レコーダーには必要だというユーザーのからの声を吸い上げてアップデート対応することになったそうです。こうした姿勢は高く評価されるべきですね。

 他社の従来製品では自己録再でも絵が安定しない傾向にありましたが、そういったこともありません。ソニーの「BDZ-V9」も良いマシンですが、ことエアチェックマシンということでは、二層が記録できるDMR-BW200の方がバランスがよいと思います。

――ソニーのSXRDリアプロ「BRAVIA A2500シリーズ」が4位にランクインです。リアプロがランクインするのは少々驚きです。

麻倉氏: BRAVIA A2500シリーズは、今年一番の意外な発見です。液晶とプラズマが急激に進化し、リアプロは“安いけど絵がイマイチ”と取り残されていた感がありましたが、逆転した印象ですね。

 なんといっても映画再生時の表現力が非常に高く、「絵の訴える力」を想像以上に伝えてくれます。暗いところで視聴すると、フィルムを見ているようなしっとりとした、リアプロならではの味わいがあります。ただ、できるだけ暗いところで見るべきですし、垂直方向の視野角が気になるので、寝転がったり見上げる位置から視聴するべきではありません。

 リアプロはスクリーンを通して見るなど、いろいろな意味で絵作りを阻害する要因が含まれますが、それらを逆手にとって、ひとつの付加価値を見いだした製品です。意図的に液晶との競合を避け、「暗いところでしっとりと映画を見る」という割り切りをしたそうですが、そこが素晴らしい。ニッチなところへフォーカスした製品企画ができたことを、SXRDによる精鋭感ある映像が支えています。

 映画はスクリーンに投影する際のロスも含めての映像文化で、スクリーンを使いますが、テレビはデバイスからの映像そのものを直視します。リアプロはテレビとは異なる文化の中で必要になるのではと感じます。液晶テレビの「シネマモード」ではコントラストを落としてしまいますからメイクセンスしませんが、この製品のシネマモードは映画に絞った絵作りをした効用がとても現れていますね。

――3位は素材にガラスを利用するという驚きのCD、「Extreme HARD GLASS CD」です。

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麻倉氏: このCDを販売しているエヌ・アンド・エフという会社は、有名なレコーディングエンジニアの方が、大会社ではクラシックの製作が難しくなってきたと感じて設立した会社です。

 Extreme HARD GLASS CDの素晴らしいところは、自然なプレゼンスをもち、クラシック音楽の魅力をストレートに伝えてくれることです。通常のCDで素材に使われているポリカーボネートは反射光が100%垂直に戻らず、横にそれたり、反射しながらディテクターに入るなど“迷光”が発生してしまいますが、ガラスならば100%垂直にもどります。スタンパは同じでも、基板の違いだけで驚くほど音が違います。

 全体にS/Nがもの凄く向上して、音の表情が非常に豊かになります。奏者がどこまでしているか、CDではつかみきれなかった細かな部分も伝わってきますし、CDではどうしても感じられてしまうデジタルっぽい不自然な輪郭強調もなくなり、きめの細かさを感じさせます。空気感や奥行き感も得られるので、奏者の指使いまでもトレースできます。

 手作りのため、高価な製品ではありますが、それに見合った音がすると思います。デジタルでもここまで音をよくすることができるという発見を喧伝した素晴らしいトライですね。

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