パイオニアが先週発表した「music tap」は、電気の配線を使って音楽を家中に運ぶ新しいコンセプトのオーディオ機器だ。サウンドステーションをセッティングしておけば、ネットワークスピーカーをコンセントにさしこむだけで、ホテルのラウンジやカフェのような“BGM付きの生活空間”ができあがる。そして、ラウンジやカフェのようなお洒落な空間を演出する上で、PLCと同じくらい大きな意味を持つのがデザインだ。
事実、music tapは製品化前にグッドデザイン賞で金賞(ベスト15)を受賞。さらにイタリアで開催される世界最大規模の家具見本市「Milano Salone」(ミラノ・サローネ)や世界中のデザイナーが集まるイベント「DesignTide」(デザイン・タイド)出品など、デザイン関連の話題も多い。
デザインを担当したのは、パイオニアデザイン(パイオニア子会社)、プロダクトデザイン部2スタジオの高橋亘デザイナーだ。これまでミニコンポやD.Jミキサーのデザインを手がけてきた同氏は、music tapでは女性をターゲットにしたデザインに挑戦。しかし、だからといってあまり違いを意識することはなかったという。「インテリアは基本的にユニセックスなものだと考えています。ですから今回は、女性向けというより、インテリアに対する感度の高い人に向けてデザインしたという感じです」。
「インテリア性が高い」と謳う家電製品は、それ自体が大きな存在感を持つことが多い。しかし、際だった存在感を持つものは、いざ部屋に置いてみると浮いてしまうこともある。
music tapの場合は少し違う。スピーカーとしての存在感を消しつつ、“日常の生活道具”という控えめな存在感を与えられた。モチーフになったのは、ネットワークスピーカーLが「陶器の器」、同じくネットワークスピーカーSは「花瓶」。住空間のどこにあっても違和感を抱かせないアイテムだ。
シンプルな外装はいずれもABS素材で、塗装は“マットなホワイト”だ。「色に関しては、よく『iPodを意識したのか?』と言われますが、正直に言うとそこは考えていませんでした。ほかの色も合わせて検討した結果、“暖かみを感じる白”が一番、家の中の景色に映えると分かったんです」(高橋氏)。
また、陶器や花瓶のような素材感にもこだわった。たとえばネットワークスピーカーLでは、金型の分割ラインが見えない場所に移動し、背面は電源ケーブルのみのシンプルな仕上げ。上面はグレーのスピーカーグリルで沈め、操作パネルだけが存在を主張する。スピーカーSも、形状の都合で分割ラインこそ残ったものの、同様のイメージだ。
一方のサウンドステーションは、上面に端にいくほど隆起した“逆アール”をつけ、明かりが当たると適度な陰影ができるようにした。全体はシンプルにまとまっているが、曲面と光が自然なアクセントを付けてくれる。
「照明によって見え方は異なりますが、たとえば電球色の明かりの下では優しい印象になります。実はこの色、木目ですとか、濃い色のキャビネットに置いても似合います。是非、棚の“いいところ”に置いてほしいですね」
棚に置かれていても、モチーフが日用品だけに、すぐにスピーカーだと判る人は少ないだろう。どこからか音楽が聞こえてきて、あたりを見回すことになるかもしれない。
「室内で存在は主張しないが、音が鳴り出せばわかる。“ここから音が出てたんだ”と驚く人もいるかもしれません。実は、それを狙ったところもあります」。
音楽が溢れ出すネットワークオーディオは、“遊び心”にも溢れていた。
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