ソニーのウォークマンが元気だ。ひところはポータブルプレーヤーが完全にイコールiPodを指していた時期もあるが、香水瓶デザインのNW-E400/500から復調の兆しを見せ始め、昨年に投入したシンプル&低価格に徹したNW-Eシリーズ、ノイズキャンセル機能を搭載した高音質モデルNW-S700/600は現在でも市場で存在感を示し続けている。
2007年に入り、ソニーは動画再生という新要素を搭載したウォークマン「NW-A800」シリーズを投入した。携帯プレーヤーにおいて、音楽の次は動画とは以前から言われていたことだが、いまだ大きな成功を収めた携帯動画プレーヤーは存在しない(動画再生が可能な第5世代iPodについても、アップルはあくまでも音楽プレーヤーだというスタンスを貫いている)。
何がソニーに新型ウォークマンへ動画再生機能の搭載を決心させたのか。携帯プレーヤー市場に対する同社の見解や新製品のコンセプトについて、同社オーディオ事業本部 統合商品企画MK部門 コネクト商品企画MK部 企画1課の木野内敬氏と、同事業本部 コネクト事業部の細萱則文氏から話を聞いた。
――新製品はMPEG-4とH.264のビデオファイルを再生可能です。これは新製品が「携帯動画プレーヤー」であることを示すのでしょうか。それとも、第5世代iPodのように「基本は音楽プレーヤーだが、動画再生ができる方が楽しみが広がる」という、副次的な機能として搭載されているのでしょうか。
木野内氏: 新製品は携帯動画プレーヤーではなく、あくまでも携帯音楽プレーヤーです。動画に対する基本的な考え方、スタンスは第5世代iPodと同じです。
なぜ携帯動画プレーヤーが普及しないのか? 動画をある程度のクオリティで楽しもうと考えれば、大きな液晶画面とHDDのような大容量のストレージ、それらを駆動させる大型バッテリーが欠かせません。しかし、それらをプレーヤーという形にすると電車の中でビデオを見るには重く、少々他人の目を気にするサイズになってしまいます。
ですが、世界的には純粋な音楽専用の携帯プレーヤーよりも、多種多彩なメディアを扱えるマルチメディアプレーヤーの登場スピードが上回りつつあるという現状があります。立ち上がりつつあるマルチメディアプレーヤーの市場へ、新製品で挑戦していきたいですね。
――最近ではワンセグ放送対応のデバイスもかなり登場し、移動中に動画を見るというスタイルも普及しつつあるように思います。それでも、軸足を携帯音楽プレーヤーにおくことにこだわった理由はなんでしょう。
木野内氏: 音楽に比べると動画はコンテンツ入手に必要な手間がかかりますし、コーデックの問題もあります。画質とファイルサイズを両立させる技術は確立されつつありますが、それでもまだ改善の余地はあります。
細萱氏: 市場に存在する数量としてはまだ携帯音楽プレーヤーの方が多いですし、需要も高いですが、動画を携帯プレーヤーで見るという需要が拡大しています。新製品は携帯音楽プレーヤーとして利用してもらいつつも、「動画を持ち出すこと」を提案する製品と言えるでしょう。
――高音質モデルとして「NW-S600/700」もありますが、新製品はマルチメディアモデルとして位置づけられるのでしょうか。
木野内氏: それは違います。NW-S600/700の「S」はSpecializedを意味し、特定部分を強化した製品と位置づけていますが、新製品(NW-A800)の「A」はAdvancedを意味しており、音質面でもSシリーズを凌ぐ製品となります。新製品は、ウォークマンを象徴するトップモデルとなります。
動画再生機能という先進的な機能を持つこともあり、どちらかといえば男性向けのニュアンスが強いですが、「携帯音楽プレーヤー」として考えれば女性にもアピールできる製品だと思っています。
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