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主要メーカー総チェック、大画面テレビの選び方麻倉怜士のデジタル閻魔帳(1/5 ページ)

» 2007年06月06日 07時00分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
photo 最新著作「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー)も好調な麻倉氏

 気が付けばすでに6月。6月といえば楽しみなのは夏のボーナスとその商戦だ。まとまった金額が使いやすいこの時期こそ憧れの大画面テレビを手に入れるチャンスで、今夏こそはと考えている人も多いはず。ただ、低価格化が進んだとはいえ、それなりの金額がするだけに、慎重な製品選びが必要になる。

 デジタル・メディア評論家 麻倉怜士氏の月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。International CESやCEATEC JAPANなど、国内外の展示会はもとより、各メーカーへ積極的な取材を行い、大画面テレビの“いま”を誰よりも知り尽くした麻倉氏に、今年これまでの大画面テレビをめぐる動向と、各メーカーの傾向についてうかがった。

大画面テレビ、今年の3大トレンド

――実は1年前にも同様のテーマでお話を伺っています。そのときには、「2006年上半期は大画面化・低価格・フルHDがトレンド」ということでしたが、今年になって大画面テレビを取り巻く環境やトレンドはどのように変化したのでしょうか。

麻倉氏: 大分すると3つのトレンドを挙げられると思います。まずは、メーカー側からのプッシュが大きく、「フルHD」がもはや当たり前になったことです。ユーザーも“買うならフルHD”という基本的な認識ができましたし、“フル”が付くか付かないかの違いも認知されつつあります。日本人は昔からテレビという製品について、高くても良いものを好む傾向がありますが、そこにフルHD化の流れがマッチしているのです。

photo “AQUOS”「LC-32GS10」

 2つめは液晶テレビの勢いが増していることです。これまでは大画面=プラズマ、中小画面=液晶という区分けがありましたが、液晶はほとんどすべてのサイズ/カテゴリに対して製品を用意するまでそのバリエーションを豊かにしています。32V型でフルHDを実現したシャープの“AQUOS”「LC-32GS10/20」の登場はその最たるものでしょう。

 台数の伸びに着目するとプラズマも伸びているのですが、液晶の伸び率はそれを上回っています。中国メーカーなど数量を多く生産するメーカーが液晶にシフトしている影響でもあり、プレーヤーが多くなっているために液晶は産業としての規模が拡大しているのです。対してプラズマは参加企業が増えておらず、寡占状態に陥っています。産業の活性化という面からすれば液晶に分がある状態です。

 3つめはディスプレイとしての純粋な性能向上です。プラズマ陣営もパナソニックが42V型という小型画面でのフルHDモデル「TH-42PZ700」「TH-42PZ700SK」を投入してきました。これまで精細化というテーマでは液晶がリードしてきましたが、プラズマがここで一矢報いました。

 また数年前、液晶といえば「映っているだけ」でしたが、その改善も急速に進んでいます。視野角はもちろん、動画解像度の改善も大きく進みました。倍速駆動は2006年に搭載モデルが登場していますが、今年はほぼ全社が製品に実装する意向を示していますし、秋にはフルHD+倍速のモデルが本格的に登場するでしょう。

photo “VIERA”「TH-42PZ700SK」

 液晶といえば「視野角が狭い、動画に弱い、暗所コントラストに弱い」が“3悪”ですが、最後の1つ、暗所コントラストについても改善を進めた製品が登場し始めています。数値的にはまだ3000:1程度ですが、トータルとしての画質改善は相当進んでいます。

 現行製品を見ていると面白いのが、前モデル比でもかなりの性能向上が見られることです。新機能/新コンセプトの搭載に比べれば欠点の改善は進めやすいという背景もありますが、まだまだ大幅な向上が続くはずです。

 新しい製造設備ではブラッシュアップがしやすいという背景もありますが、コントラストについても、とあるメーカーでは3万:1を目指しての開発が進められています。シャープが現行のAQUOSで3000:1のコントラスト比を実現できたのも、亀山第2工場の存在が大きいのです。新工場は合理化によるコストダウンが進めやすいのですが、同様に性能向上も進めやすいのです。

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