東芝の「RF350」シリーズは、スリム・ベゼルが特徴のスタイリッシュな液晶テレビだ。9月中旬から店頭に並び、従来の「REGZA」シリーズとは一線を画すコンセプチュアルな新製品として注目を集めている。製品企画を担当した同社テレビ事業部の本村裕史参事と、同社デザインセンター デジタルプロダクツデザイン担当の佐川崇参事に聞いた。
――まず、新しい製品ラインとして「RF350シリーズ」を企画した背景を教えてください
本村氏: これまでREGZAは3シリーズ(C、H、Z)で展開してきましたが、その4本目の柱を目指して作ったのが「RFシリーズ」です。
ラインアップが増えるときは、どうしても価格差やスペック、サイズ差などメーカー側の理論が先行しがちですが、REGZAの場合はユーザーの趣味指向を考えて作ります。たとえば画質にこだわるAVファンにはZシリーズ、画質と同時に価格も重要と考える方にはCシリーズ、女性を中心にテレビが大好きな人たちには録画機能を持つHシリーズといった具合です。
そしてRFの場合は、インテリアなどのデザインにこだわりを持ち、ちょっとすてきな演出で暮らしを豊かにしたい人。家具のセレクトショップに行く人たちが、家具や雑貨と同じような感覚で選べるテレビを目指しました。
テレビは、好む好まざるに関わらず、リビングに置かれるものです。しかも部屋の方角やインテリアの方向性を決めてしまうくらいテレビの存在感は大きい。ただ、家具のセレクトショップに行って“わくわく”する人は大勢いますが、家電量販店で“わくわく”する人は少ないでしょう? 同じ人たちなのに、今までは同じ目線でテレビを見ることができなかった。RF350シリーズの登場で、それができるようになったと考えています。
また、われわれメーカーとして実は重要なポイントは、ベゼルが細くなったため、同じ横幅でワンサイズ大きなテレビを選んでもらえるという点です。結果としてですが、従来の37インチ液晶テレビを置けるスペースがあればRF350の40インチが置けます。同じように従来の42型が置けるなら46型が置ける。完全にワンサイズアップできるんです。
テレビを購入するときは、どうしても設置スペースに対してナーバスになりがちです。一方でイメージしているよりワンサイズ大きいものを買うほうが満足度が高いことも事実です。物理的なスペースの制約もあるでしょうが、実際には「大きすぎて失敗した」という話はほとんど聞きません。
――全体をコンパクトにできた技術的なポイントは何でしょう
本村氏: 技術的な背景でいえば、フレームの細いパネルとスピーカーを開発できたことが大きなポイントでしょう。液晶パネルはパネルメーカーと一緒に作るわけですが、ベースになったのはPCモニターのフレームの細いもの。倍速駆動こそ入っていませんが、10bitの広色域パネルに「新メタブレイン・プロ」を組み合わせています。
またスピーカーは10センチ径の丸形ユニットを2つ搭載したパワージェットスリットスピーカー」です。たとえば昨年の「Z2000」では楕円径ユニットを使用して高域を補うためにツィーターを追加していたのですが、大きな径の丸形スピーカーを使って音質的にも有利になりました。技術的なブレークスルーがあり、そこに製品に対する強い意識が入ると“尖った製品”ができるという好例でしょう。
――従来のREGZAシリーズが掲げていた「ミニマルデザイン」とは随分とイメージが違いますが、これもミニマルデザインといって良いのでしょうか?
佐川氏: ベゼルの細いパネルがあり、存在感を消せるコンパクトなスピーカーユニットができた。もうこの時点で、われわれは本質的にミニマルに達するパッケージングを手に入れたわけです。
いささか逆説的ですが、ここまでスリムかつコンパクトになったものに対して、今までストイックに求めてきたミニマルデザインが有効か? と考えました。以前より安くなったとはいえ、大型テレビは高額商品です。購入したときに満足感や高級感がないといけません。
本当にミニマルなパッケージを手に入れたとき、高級感を併せ持つにはどのようなサーフェス(表面デザイン)が良いのか。インテリアエレメントとしての上質感を表現するためには、光沢のある「艶」っぽさが逆に有効なのではないか。そこからデザインを始めました。
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