「iPodキラー?」というまったく的外れの「見出し」とともにニュースに登場したソニーの“サウンドエンターテインメントプレーヤー”「Rolly」は不遇のスタートを切った。ソニーは「ウォークマン」というアウトドア型パーソナルミュージックというジャンルを切り開き、地球規模で大成功したにもかかわらず、昨今はiPodの後塵を拝している。「iPodキラー」は反撃を待ちくたびれたメディアが期待を込めて付けた激励の見出しなのか、それとも、発売する側のソニーが意図的にそう思わせたのか、筆者の知るところではない。
いずれにせよ、ほんの数分でもRollyと遊んでみれば、その表現が的外れで見当違いであることは誰でもすぐ気付くはずだ。Rollyは、アウトドアでイヤフォンを使い超個人的に楽しむウォークマンとは異なるコンセプトの製品であり、ソニー版iPodを期待する人は大きくハシゴを外されることとなる。Rollyは、ファンキーでコケティッシュ、そしてコミュニケーション系のプロダクトなのだ。有り得ないことだが、ソニーが予告段階で自社新製品を意図的に「iPodキラー」だと思わせたのなら、もう一度、イチからマーケティングの勉強が必要だ。
Web上で公開された「ティーザー広告」も、実際のRollyのイメージとはかけ離れている。過度のグローバル指向を背景にした米国流のティーザー広告「Rolly-Show」は、見る者をクールでアダルト、アバンギャルドな方向へと誘導するモノだった。しかし、今、筆者の手のひらにいるRollyは、企画・開発者たちの意図通りか否かは別にして、かわいらしくフレンドリーなプロダクトに仕上がっている。見かけよりはるかに重い重量(約300グラム)は手のひらにズッシリとその存在感を感じさせる。それは時々鈍いカラフルな光を放ちながら、静かに寝息をたてる今まで見たこともない生物のようだ。
丸1日Rollyに触れて感じるのは「優しさ」「楽しさ」「暖かさ」「余裕」という感覚であり、ティーザー広告と実際のRollyにはギャップを感じざるを得ない。同時に「キラー」というありきたりで安っぽい言葉は、Rollyの真のターゲットユーザー像を見えにくくしてしまった。既に世界が確立されて数年以上を経過したデジタルオーディオプレーヤーというジャンルだが、まだまだ初めて製品を購入するユーザーも多い。今はまさに技術革新と価格戦争の真っ只中だ。違う世界の商品として登場するはずだったRollyだが、「iPodキラー」という後からついた不似合いな看板は、誤った期待を抱かせる不幸の始まりとなった。
パッケージにはRolly本体と簡易スタンド、充電池、マニュアル、CDなどが入っている。「Sonic Stage CP」と「Motion Editor」という2つのアプリケーションをパソコンに導入すれば、Rollyを楽しめる環境が完成する。Sonic Stage CPはソニーのデジタルミュージックプレーヤーには標準添付されているソフトウェアであり、パソコンのHDDに生成・保存されたミュージックデータをRollyに転送する機能を提供する。もちろん、音楽CDから楽曲をリッピングする機能も搭載している。対応する音楽データ形式は、MP3/ATRAC/AACの3種類だ。
Rollyのウエストと身長の最大値は104ミリ×65ミリ。卵形の体型だ。専用リチウムイオンバッテリーを燃料として約4時間〜5時間動作する。本体に収納されるリチウムイオン充電池は付属のUSBケーブル経由でパソコンなどから充電する。内蔵フラッシュメモリの容量は1Gバイトで、132kbpsの音楽データ(モーションデータなし)が250曲(約16時間40分相当)収録できる。手のひらにのせたRollyは、意外とズッシリと重量を感じさせ、パールホワイトの塗装と相まって高級感がある。明らかに手触りや重量感はAIBOのそれと類似のモノである。
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