本田雅一のTV Style
薄型テレビの音質アップグレードを考える(2)
薄型テレビ、特に50インチといった大型テレビを購入した人に訊くと、かなりの人が「サラウンド機能を持ったシステムが欲しい」と話す。DVDなどの市販ビデオソフトを見るときはもちろん、サラウンド音声で放送されているコンテンツもあり、どうせオーディオ面のアップグレードをするならば、サラウンドが良いと思うようだ。
サラウンド音声を楽しむためのフルセットとなると、フロント3本にサラウンド2本、それにサブウーファーを加えて6つのスピーカーユニットが必要となる。大抵の場合、センタースピーカーとサラウンドスピーカーの置き場所に困って挫折。バーチャルサラウンド機能を持った2.1チャンネルシステムを検討する、という流れで悩むことが多い。
しかし、ここは頭を切り替えて、本当にサラウンドを重視した製品が良いのか、それとも音の質を高めたいのかを、もう一度、自問してみることを勧めたい。
なぜならサラウンド音声を2つのスピーカーで再生しようと、反射音や残響音の成分、それにセリフの多いセンタースピーカーの音を2チャンネルに合成すると、どうしても音の質感や情報量は落ちてしまうからだ。フロントスピーカーのみでサラウンド感を得ようとしても、音場は豊かにはなるが、音の質は高くはならない。そうしたことを踏まえた上で、まず今週はフロントサラウンド機能を持つ一体型の薄型テレビ向けスピーカーシステムを紹介しよう。
まずサラウンド音声重視で包囲感を得たいのであれば、バーチャルではなく、リアルに5チャンネル分の音声をフロントから再生するシステムを選びたい。代表的な製品はヤマハの「YSPシリーズ」だ。
YSPシリーズは、指向性の強いスピーカーを多数並べ、音声モードに合わせて音を放出する方向を制御。壁や天井などに音を反射させ、あたかもサラウンドスピーカーが自分よりも後ろに存在するかのように聞こえるというもの。サラウンドやセンターチャンネルの成分は他のチャンネルと合成されるのではなく、あくまで個別のスピーカーユニットから出るという点が重要だ。
最上位モデルの「YSP-4000」では、40個の指向性スピーカーを用い、部屋の特性を計測してサラウンド音場が整うように自動的に調整する。店頭のデモなどでは、反射させるべき壁が存在しない場合が多く、体感することは難しいが、リビングや自分の部屋で聴いてみると、ちゃんとサラウンドになるのが分かる。
テレビ下のラックに収めるだけで機能するスピーカー製品としては、このシリーズが最も本来の5.1チャンネルシステムに近い音を実現してくれる。以前のモデルは低域再生能力が低く、サブウーファーが必須だったが、YSP-4000はその点を強化しているため、本体のみでも十分に楽しめるはずだ。デザインの面でもシンプルでまとまり良く、見栄えがする。
一方、NIROの「Spherical Surround System」(スヘリカル サラウンド システム)も、センターやサラウンドの音声をメインスピーカーにミックスせず、それぞれ独立したスピーカーユニットで鳴らす。従来のNIROシステムはフロントに一体型の3チャンネルスピーカーを配して、サラウンド音声はバーチャルサラウンド技術で聴かせていたが、新モデルではサラウンドチャンネルを独立させ、テレビの上に設置する方式を採用した。
フルレンジのスピーカーユニットは再生周波数帯域こそ狭めだが、バランスが良く耳当たりが良い。加えて中域の情報量や表現力が高いため、セリフの再生や効果音が明瞭に聞こえる。薄型テレビからの切り替えなら、明確にグレードアップを感じることができるはずだ。
サラウンド感はバーチャルサラウンドよりも良好で、前後の定位も比較的明瞭だが、独立した5チャンネル分のスピーカーを使うシステムに比べると背後の音は薄い。5.1システムは欲しいが、サラウンドスピーカーはどうしても置けないというユーザーにお勧めしたい。
サラウンドはバーチャルでも、音の品位の面でも、もう少し上の満足感を得たいということであれば、マランツの「CINEMARIUM (シネマリウム) ES7001」がお勧めだ。見た目はYSP-4000とよく似ているが、12センチ径のウーファーはエンクロージャー容量も十分で、低域の再生能力は比較的高い。音のバランスも良く、音楽もなかなかゆったりと楽しめる実力がある。
この製品に採用されている「OPSODIS」(オプソーディス)というバーチャルサラウンド技術は、これまで聴いたバーチャルサラウンドの中でも、もっともサラウンド感が明瞭で立体感がある。また真ん中で聴いている1人向けに強いサラウンド感を感じさせるのか、それともサラウンド感はやや落ちるものの、前に座る3人ぐらいに均等にサラウンド感を得てもらうのか、処理の手法を切り替える機能を持っており、複数人数でもバーチャルサラウンドを楽しむことができる。
これら3製品はサラウンド性能は最初に紹介した方が、再生帯域や音楽を聴いた際の品位は後者の方が高い。求める性能のバランスで検討してみるといいだろう。
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