アナログ/デジタルを問わず、色を再現するときには「光の三原色」、すなわち赤・緑・青の「RGB」が使用される。三原色の濃淡を数値で表現(相対的色空間)することにより、色を再現するしくみだ。しかし、色の基準はハード/ソフトによって異なるため、PCで再生したときの印象が撮影時と異なるという事態が発生する。逆にいえば、PCの画面に見えている画像が本来の色とはかぎらない。そこで考案されたしくみが、いわゆるカラーマネジメントシステム(CMS)だ。
CMSは、デジカメやスキャナといった入力機器と、PCの画面などの表示装置とプリンタなどの出力結果の色を合わせる「カラーマッチング」に使用される。静止画の場合、業界団体のInternational Color Consotium(ICC)により「ICCプロファイル」が制定され、いわば「色の身分証明」として広く利用されている。
画像編集ソフトを例にすると、画像ファイルに添付/埋め込まれたICCプロファイルを参考に機器非依存の色空間(絶対的色空間)へと変換し、続いて表示装置側のICCプロファイルにより表示装置の色空間へと変換、さらに表示装置の特性に応じたガンマ補正などの処理を経て最終出力を得る、といった場面に必要とされる。
なお、Mac OS Xの「ColorSync」やWindows Vistaの「Windows Color System(WCS)」など、昨今のOSでは標準機能としてCMSが提供される例もある(Adobe Photoshopのように、独自のCMSを装備したアプリケーションもある)。
動画については、映像機器の高性能化とハイビジョン化によって、転換期を迎えている。ブラウン管時代は色を表現できる幅が狭く、NTSCがカバーする色域の70%程度の表現力をもつsRGB規格(ITU-R BT.709)で十分だったが、色表現力に優れる液晶/プラズマテレビが普及したため、より広い色域をカバーする必要が出てきたからだ。
現在sRGBにかわる規格と目されているのが、2005年に国際電気標準会議(IEC)によって策定された「xvYCC」(正式名称は「IEC61966-2-4」。ソニーは呼称として「x.v.Color」を提案し、各社も呼応している)。HDテレビ放送で利用されているITU-R BT.709との互換性を保ちつつ、人間の目が認識可能な色のほとんどをカバーできるまで色域を広げている。
ハイビジョン時代のAVケーブル「HDMI」の最新規格(v1.3)では、このxvYCCをサポートしている。AV機器メーカーも、2007年あたりからxvYCC対応の薄型テレビを次々と発売している。映像コンテンツ側の対応も必要なため、ただちにそのメリットを享受できるわけではないが、AV機器の更新に備え、頭の片隅に知識として入れておくべきだろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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