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ダビング10時代のエアチェック考麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

» 2008年07月10日 11時00分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

ダビング10の恩恵

――先ほども話が出ましたが、ダビング10ならではのメリットとは何でしょうか。

麻倉氏: ダビング10が開始され、デジタル・ダビングに関する環境改善が進んだことは確かです。うまく活用すれば楽しく編集できますが、気を付けたいのは、15秒のCMだろうと一瞬の表情だろうと、1秒でもダビングしてしまうと1回とカウントされることです。そこでプレイリスト機能を持った機器を活用したいですね。

 プレイリストを利用することで、歌番組を編集してある歌手の出演シーンだけを集めたベスト版を作製する、MCなどをカットして歌っている場面だけを集めるなど、HDDに収録されたコンテンツを編成し、コンピレーションを上手に作れるのはダビング10ならではのメリットです。

 コピーワンス時代は「1番組イコール1枚」しかできませんでしたが、これからは番組を細分化して、自分で編成して1枚のディスクへ納めることが可能となりますし、これが非常に面白いです。「エアチェックのポストプロダクション」といえる楽しみ方が広がったといえますね。放送をただ見て録画するだけではなく、放送を素材化しての再編成・再構成が楽しめます。より積極的にハイビジョン映像を楽しめる環境が、ダビング10の開始で構築できるのです。

 ダビング10自体はそこまで考えて作られたものではありませんが、利用者の視点からすれば、自分らしい価値観でコンピレーションディスクを作るという放送の活用が可能となりました。これが、ダビング10が私たちへ与えてくれた恩恵でしょう。

 ここで大事になるのがレコーダーの操作性です。プレイリスト機能は欠かせませんし、その操作性は増して大切です。市場を見渡すと、まだプレイリスト機能を持っていないハイビジョンレコーダーも散見されますが、プレイリスト機能だけに注目すればいまだ東芝製品は優れています。HDDとDVDにこだわらず、早くBDを搭載したレコーダーを出して欲しいものです。

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 コンピレーションディスクを作る際に欠かせないブランクディスクですが、BDディスクは2層も値下がりが続いており、1層BD-Rならば1枚500円に近づいています。BDはDVDの約5倍の容量を持ちますので(1層BDは25Gバイト、1層DVDは4.7Gバイト)、市場売価が1枚あたりDVD 100円/BD 500円というラインに近づいいるのは利用者にとって好ましい状況といえるでしょう。2層BDの価格はまだ2000円を切る程度ですが、使ってみるととても使いやすいですね。

 1層BDではBSデジタルのハイビジョン2時間番組をTS録画すると、それでほぼ容量を使い切ってしまいますが、容量が倍の2層BDならばもう1番組録画できます。編集なしに、関連性のある2つの番組を1枚のディスクに収めたシンプルなコンピレーションディスクが作製できるのです。

 わたしは今、NHKの語学番組に凝っているのですが、そうした短い番組をまとめていくにも2層BDは向いています。それに音楽番組を録画するにしても、オペラですと2時間に収まらないことも多いので、やはり2層が必要となります。実売価格で1200円程度まで下がってくれるとうれしいですね。プレイリストを活用して、自分の感性で2層ディスクにコンピレーションを作っていくのもの楽しいと思います。

 ディスクといえば、有機材質を用いたBD-R(LTH BD-R)にも注目です。まだ量産効果を発揮するまでには至っていませんが、時間がたてばLTHのほうが安価になる可能性はあります。太陽誘電製のLTHを試用しましたが、音質面での素晴らしさが目を引きました。メジャーメーカーの無機材料を用いたBR-Rに比較しても、それは明らかでした。きっと音質にこだわった設計がされているのでしょう。

 これからはBDメディアにもVHSテープのように、スタンダート/ハイグレードのようなカテゴリ分けが求められと思います。情報番組はスタンダード、音楽や映画はハイグレードでといった使い分けをするといいでしょう。まだ、市場はそこまで成熟していませんが、将来的には必要となる――、そうした印象を受けました。

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